Pop Styleブログ

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本日発売の夕刊popstyleでは、「モテキ」などの作品で知られる漫画家の久保ミツロウさん、イラストやエッセーなども好評な「自称」漫画家の能町みね子さんのラジオ番組「久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン」(毎週火曜深夜1~3時)を特集します。

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 もてなかったり、今どきはやりのポジティブシンキングになじめなかったり、そんな僕らのハートを、斜め下からくすぐるようなローテンショントークが、共感を呼んでいます。「顔は見せたくないのに……」(久保さん)と言いつつも、徐々にメディア露出が増えているお2人です。
 そのお話は記事を読んでいただくとして、今回の取材には、別の楽しみがありました。それは、能町さんとの、再会でした。実は、記者は能町さんとは大学時代の同級生。彼女が「彼」だった頃からの知り合いということになります。最後に会ったのは私が入社する直前、2005年の、確か3月でした。新聞社は入社したらまずは地方勤務です。しばらく東京に戻れなくなるので、できる限り多くの人に会っておこうと、連絡をとったうちの一人が、彼女でした。
 私は大学卒業後、3年間フリーターをしていたので、大学の友人に会うこと自体が3年ぶり。彼女が「彼女」になっていることも知らなかったので、ずいぶん驚いた記憶があります。しかし、当時はまだ著作活動はしていない頃で、いわば「プレ能町」とでもいうべき時期でした。東京・下北沢の、共通の友人の古いアパートで、とりとめの無い世間話を交わし、私は初任地の富山県に旅立ったのでした。
 それから約2年後、私は富山県の魚津市という所で仕事をしていました。漁業が盛んな静かな町で、夏は海に蜃気楼(しんきろう)が立つことで知られています。
 平和でのどかな田舎町なので、いつも忙しいということはありません。仕事が終わると、深夜まで営業している駅前の本屋をぶらつくのが日課になっていました。ある日、仕事の後、いつものように書店の本棚の間をぶらついていると、ふと目に留まった一冊の本がありました。平積みにされているわけでもなく、つまり、一押しということではなかったのでしょうが、棚に挿して並べられていた青い背表紙の本は「オカマだけどOLやってます。」という名でした。
 私が普段手に取るようなタイトルではなかったのですが、その時はなぜか心に引っかかったのです。「これ、あいつじゃないか?」というひらめきがあったから。手にとって、ぱらぱらとめくると、そこに書かれたエピソードは、そう、どう考えても「あいつ」のこと。そして、下北沢のアパートで聞いた、あの話のこと。
 「間違いない」と思い、急いで彼女に宛て、「もしかして、能町さん?」という程度の短いメールを送信しました。しばらくして返ってきたメールには、「ばれた?」という文言が。なぜ、あのときその本が目に留まったか、今考えても不思議ですが、それ以降、彼女の作品にずっと注目していたのでした。
 久保ミツロウさんは大好きな漫画「モテキ」の作者。また、フジテレビの番組改編期の単発番組「久保ヒャダこじらせナイト」での、胸がちくちくする自虐トークも、いつも楽しみにしていました。
 この2人が仲がいいなんて。ましてラジオ番組を持っているなんて。これをポップで紹介しないわけにいくだろうか、いや、紹介するしかない(反語)。というわけで、取材のお願いをしたのでした。
 取材が行われたのは、9月24日の夜、番組放送直前のニッポン放送の一室でした。部屋に入るなり、能町さんは、「も~どういうこと!?」と、驚くというよりあきれた様子。久保さんは「えっ? 知り合いなの?」と、複雑な表情を浮かべます。それは複雑でしょう。私も内心どきどきでした。知り合いに取材するなんて、なかなか無い機会ですから。
 それでも、大学時代の話になると、友人の話などで思わぬ盛り上がりを見せました。中でも、久保さんにショックを与えたのが、「能町さん、大学時代はリア充疑惑」です。私の実家は長野県安曇野でペンションを経営しており、大学1年生の夏休みに、東京から友人を連れて遊びに帰ったことがありました。彼女は(当時はまだ「彼」でしたが)その中の一人だったのです。
 「何その、リア充な感じ! 初耳なんだけど」と驚きの声を上げる久保さん。悟りを開いたような表情で「それは、私の中でそんなに重要なことでも無かったから……」と、遠い目をする能町さん。さらにショックに追い打ちをかけたのが、「能町さん、大学時代にバンドサークルに所属、それどころか、演劇で主役も演じたことがある事件」でした。これも全くの初耳だった久保さんは、「え~、楽しい大学生活を送っていたんじゃないですか。私も高校時代演劇部の部長だったけど、主役は無かった……」。
 これは、言ってはまずかったかなと思っていたら、能町さんがあわてて、「でもね、サークルの人たちが着るような、同じマークをつけた、あのシャカシャカしたジャンパーは着ていません!」と、そこだけは分かって欲しいというように懇願します。主にテニスサークルの人たちが誇らしげに着ている、サークル名の入ったおそろいのアレ(主にナイロン製で、黄色いイメージ)のことですね。確かにそれは着ていなかったことだけは、私も保証します。
 無事に取材が終わり、その直後に始まった番組のオンエアーに耳を傾けました。すると、久保さんが「この番組の前に取材が入ったんですけどね、それが大学の時の能町さんの同級生だったんですよ……私ね、嫉妬しちゃいましたよ! 私、聞いたことのない話、いっぱい聞いちゃいましたよ」と切り出し、数々のリア充の「罪状」を読み上げます。能町さんは「なんであれを言ったかね、Aくんは……」と苦しげにうめきます。
 そうです、私が「Aくん」です。人には、触れてはいけない過去がある。そのパンドラの箱を空けてしまったのでした。それでも、彼女について知っていることは、大体久保さんにはお伝えしました。お2人の仲が今後もよからんことを。読者の皆様は、「そんなことがあったんだ~」と、にやにやしながら記事を読んでいただけると、ありがたいです。

 

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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