Pop Styleブログ

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「ALL ABOUT → Pia-no-jaC ←」のブログ延長戦、さらにすごい話の第2弾は、ある意味、基本的なことではありますが、彼らの最も特筆すべき点、「音楽の楽しさを伝える」力について書こうと思います。

本題に入る前に、紙面に対する様々なご反応ありがとうございます。プレゼント応募のアンケートも目を通しておりますが、思い入れのこもった感想ばかりで、感激しました。中でもうれしかったのが、「PJを解くキーワード」が好評だったこと。【P】Power、【I】idea、【A】activity・・・などと、P・I・A・N・O・J・A・Cの文字を使って、あいうえお作文的に特徴を並べてみたのですが、あれはもちろん公式なものではなく、当編集部として独自にというか勝手に考えたものです。ピアノジャックが遊び心に溢れているので、書く立場の我々もついつい何かやっちゃいたくなるんですよね。全くの私見なので、反応が気になるところでしたが、ファンの皆さんも納得していただいたようで、よかったです。まぁ、本当はどのアルファベット使ってもできるし、この8文字だけでは表しきれないなあとも思っているんですがね。Pは「Passion」でもいいわけですしね。でも、それだけ、特徴が多い、語ることが多いユニットということなんですよね。あ、プレゼント応募はまだまだドシドシ送って下さいね。応募の数が紙面に対する反響にイコールとなるということもあるので(なんてぶっちゃけてしまって良いのだろうか・・・)。

さて、今回の話は、キーワードでは「【J】Joy(喜び)」と表現したことと重なるのですが、「音楽の楽しさを伝える」ことについての力、そして彼らの思いについて書きたいと思います。

これは、彼らの活動の原点であるので言うまでもないことかもしれません。何せ、樫原プロデューサーが二人に対し、「お前らは、音楽で何がしたいんだ」と問うたとき、二人は「音楽でみんなを笑顔にしたい」とだけ話したそうですから。

まず第一に、彼ら自身が存分に音楽を楽しんでいます。HAYATOさんが音楽を楽しんでいる様子は、ピアノを弾く時に会場に向ける笑顔や、体全体が喜んでいるような肉体のうねりで伝わってきます。HIROさんも頭を揺らしながら、全身で音と戯れている。インタビューして意外だったのですが、HIROさんは喋る時はスゴく真面目で固い感じなんですよ。自分でも「すごい真面目」と言ってましたが、音楽で違うスイッチが入っちゃうんだろうなあってぐらい印象が違います。悪い意味ではないですよ。話しているHIROさんもすごく好印象なのですが、こちらが申し訳なくなるぐらい腰が低いんです。「こち亀」の本田さんが、バイクに乗った時のようの変わりようです(すいません言い過ぎました)。HAYATOさんは、そのままでした(笑)。

そのHIROさん。やはり「よう楽しそうに演奏してるねってアーティストの人にも言われたりしますね。そうなんです、楽しいんですって(言うんです)」と話していました。HAYATOさんも、「全部音に出ちゃうと思うんですよね。本当に楽しそうに弾いていても音が楽しくなかったら、本当に楽しんでないんだなっていうのは、すぐ分かっちゃうことだと思うんですよ」。そう、演奏している二人は本当に楽しそう。だから、音からも「幸せなグルーブ」がビシビシ感じられるんですよね。

あまりに楽しそうなステージ上の二人。その理由の一つに二人の音楽的な相性の良さがあると思います。「二人でずっとやっていて楽しくなかったライブってないんですよ。これ自慢で。それまでに『お前、あそこ違うやろ』って大ゲンカしても、ライブ始まるとホント楽しくて。その思いってどんな形であれ伝わるからって思ってもいるので」(HIRO)。「音を一発出しただけで、『あ♪』って思って、ついニヤけてしまうっていうか」(HAYATO)。これは、本当にうらやましい関係ですよね。でも、性格は全然違うんだとか。「たぶん同じクラスだったら友達になってないですよ」(HAYATO)。「音楽で通じ合わへんやったら、多分ここまで仲良くはなってないですよ。きっかけが音楽だったから、こう仲いいんでしょう」(HIRO)。まさに音楽の神様が結びつけてくれた二人なのでしょう。

さて、音楽の楽しさを伝える力の一つは、彼ら二人が存分に楽しむ姿を見せていることなのですが、もう一つ、重要なのは、音楽は自由に楽しめばいいという原点を伝えていることではないでしょうか。

紙面でもお伝えしましたが、HAYATOさんはクラシックピアノ、HIROさんはエレクトーンを幼少期に習っていて挫折した経験があります。そして、独学でピアノとカホンを習得していったのですが、二人とも自由なスタイルでプレイを楽しんでいる。「ミスタッチから新曲が生まれたりする」というHAYATOさんの言葉は、本当に前向きな考え方だなと感心してしまいます。「ミスタッチから、すごい!こうなったという発見をして、それで曲ができたパターンもあるんで。どんどんそれで変化させて、テンションが上がったら、腕が足りなかったら、足も使っちゃえみたいな勢いだったり」(HAYATO)。

”足技”に関しては、HAYATOさんがステキなエピソードを披露してくれました。

「この前、インストアライブしたときに、言われたことがあるんです。『この前、息子がピアノのレッスンの時に、足で弾いて怒られました』。そうですよねーー(笑)って言いつつ、それ楽しかった?って聴いたら、『うん』って言ってたんで、じゃあいいよって。やっぱ音は楽しまんとって。何でもありなんやでって」

私個人の話で恐縮ですが、筆者もクラシックピアノを習っていて練習嫌いだったものですから、すごく共感できるんですよね。「できない、できない」って苦しんだ経験ばかりで、今思うと、本当に好きでやっていたのだろうかって。でも、譜面と格闘するのと関係なく、適当にピアノをいじって音と戯れていると、何時間でも過ごせちゃうんですよね。学生時代でキーボードをやっていたときも、ひたすら難しいテクニックを追求することばかりで、眉をひそめながら演奏するサークルにいたものですから、音楽を楽しむという原点を置き去りにしていたのかもしれません。

余談でした。失礼いたしました。でも、ファンの方も、音楽で挫折した経験のある方が多いと聞きました。私に限らず、「そうだよな。こうやって楽しむことこそが、音楽の原点だよな」って改めて気付かされた人は多いのではないのでしょうか。今回のツアー向けに、HAYATOさんがピアノの黒鍵を赤く塗って「赤鍵」にしたのは笑えました。「黒鍵きらいやから」って理由、プロとしてはどうかなって感じもしないではないですが(笑)、いやいやいいんです。共感します。僕も黒鍵大嫌いです。なるべくなら黒鍵さわらずに済ませたい。いやホント、黒鍵はピアノの構造上の欠陥だ!弦楽器も管楽器も、そういうのないじゃん!!なんでピアノだけ!? 

またもや、失礼しました。だいぶ私怨がこもってしまいました。でも、ピアノジャックを聴いて、「もう一度ピアノやってみよう」という人は多いのは本当のようで、スコアは出せば必ず1万冊も売れるのだとか。これ驚異的ですよ。スコアや教則ビデオを作る上での思いを、HAYATOさんはこう語っていました。「カホンってまだ皆さん知らないと思うし、でも誰もが音を出せますし、ピアノも誰Dでも音が出せる。途中で挫折してやめてしまった人も、それからやろうかなって思いつつ敷居高いなって思ってる人でも、全然そんなことないんだよ、誰でもさわってもいい楽器なんだよという楽しさを作りたい思いで作っています」

「音が出るものは何でも楽器」。HAYATOさんはこうも言っていました。ライブで、HIROさんが次から次へと投入する鳴り物の数々がまさにそうですよね。樫原プロデューサーいわく「HIROは、鳴り物貧乏」(笑)。ライブに向けて、たくさん買ってくるものの、ボツ鳴り物も多いんだそうです。このエンターテインメント根性、すごいですよね。プライドだけ高い人だったら、「とにかく、オレのカホンだけを聴け」ですよね普通。

そして、私も先日のライブで見て感動したのは、「シャカシャカ大作戦」ですね。ライブ未見の方のために説明すると、コンビニのレジ袋と同じ素材の袋を、ライブでは「シャカシャカ大作戦」と称して、お客さんに擦ってもらってシャカシャカ音を出したり、膨らませてポンポンと叩いてもらうものです。「音が出るものは何でも楽器なんだよっていうのを伝えたいです。音遊びって誰でもできるじゃないですか。やったことなくても、コンビニの袋でシャカシャカすればリズム取れるし、グルーブも出そうと思ったら出せる。そういうのでみんなでセッションしたら面白いじゃないっていうので、音楽の楽しさをどんどん伝えていきたいなあって。会場会場で子どもたちが、すごい楽しそうな顔をしてやってるんで、それがメッチャうれしいんですよ。そうして、ライブで音楽って楽しいなって知ってもらえたら、すごくステキなことなんじゃないかなあって思って」(HAYATO)。しかも、5枚300円で売っているという仕掛け、すごいアイデアだと思います。初めて来た人は当然買っていない。だから、常連のファンの方が持っていない人に分け与えてるんですよね。そうやってファンの絆を生み出している。この袋をシャカシャカするという行為は、ライブで声出したり、手をあげたりするのが恥ずかしい人でも、おそらく参加しやすいことなんじゃないかなと思います。「みんなが袋分け合う姿って、すごくうれしいんです。音楽で楽しそうにやって、みんな楽しそうって言って、そういったきっかけで色んな何かになる。そのすべてがピアノジャックじゃないのかなと思う。媒体は音楽かもしれないけど、それ全部ですよね」(HIRO)。

もう一つ、私が伝えたいことは、会場のお客さんを楽しませて、ライブに巻き込むことに成功しているといえるのは、こういう分かりやすい仕掛けだけではないと思うのです。ピアノジャックの演奏、二人が作り出す空間には、あらゆる感情動作心情が溢れていると感じたのです。喜怒哀楽という四文字熟語では到底足りない。夢中・恍惚・感動・元気・没頭・躍動・気合・執念・熱気・焦り・安堵・気障・挑発・間抜け・爆笑・ボケ・ツッコミ・・・・。あらゆる感情が渦巻くステージで、会場の人々はあらゆる感情を揺さぶられ、そして解放することで、てらいなく叫び、手を叩き、跳び、拳を掲げる。そして空っぽで純粋になった心で、何一つ難しいことを考えずに、音をそのまま楽しむことができるのではないでしょうか。

「音楽ファンじゃない人が、能動的に買いに来る」。ヴィレッジヴァンガード下北沢の金田謙太郎さんは、こう話していました。これは重要な証言だと思います。だとしたら、ピアノジャックは、音楽ファンの裾野を広げている。これまで音楽をたくさん聴いてこなかった人も引き寄せている。まさしく、音を楽しむ原点を伝えることで、音楽ファンじゃない人にも響いているのではないでしょうか。制作側はどうでしょうか。樫原プロデューサーは、「みんなが投げ込んでいるストライクゾーンには投げていない」と語っています。その結果、「必ずしも、インストファンが聴いているわけではない。バンプやミスチルなど普通のポップスの愛好家が多い。歌もののように感じられているのかも」だと。なるほど、年配の方から子どもまで幅広いファンがいる理由が分かる気がします。私には、歌のないインストゥルメンタルは、そう大多数の人には伝わりにくいという先入観がありましたが、決してそうではないのかもしれない。

最後に、HIROさんの言葉で、さらにすごい話・第2弾を締めたいと思います。

「やっぱ言葉がないことは武器になると思ったんですよね。言葉がある分、伝わるっていうのももちろんそうなんですけど、俺たちは身ぶり手ぶりもあるので、もっとそれで伝えられるだろうし、いろんな壁も越えられる、言葉の壁も文化の壁も年齢の壁も越えられるじゃないかと」

あらゆる人に、音楽の原点を知らしめてくれるはずの彼らの音、そして何よりライブを、ぜひ体感してほしいと思います。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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