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綾小路さんインタビューこぼれ話の最終回は、活動を再開した氣志團に対する思いから、自分の今後やポリシーについて熱く語ってもらいました。こんなに多才な綾小路さんが、謙虚に自分を見つめ、だからこそ走り続ける。私も書いていて、胸が熱くなりました。最後まで一気にお読み下さい。

てか、こんなすごいメッセージ、こんなブログごときで出していいのでしょうか? 出版社さ~ん! これすごい本になりますよ~!!

<以下、インタビューから>

綾小路 いまだにいろんな人にいろんなこと言われていて。「なんか「氣志團ってどうなの」「確かに当時はセンセーショナルだったけど、やっぱオズマの影にかすんでるよね」「何やってるんですか、今?」って、ホント普通に言われますし。やっぱメディアに出ないってそういうことなんだなと思ったり、氣志團は解散したって思っている方も多々いらっしゃるし。

だけど、ボクも意地になっている部分が正直あるのかなって思っていて、氣志團はボクの中で発明だと思っていて、「こんなバンドもう2度と表れない、おせっかいかもしんないけど、今回ばっかりはもっと多くの人に知ってもらわないと、後悔する気もするなあ」ってのがあって、で、もう一回やろうかってことで動き出したんですけど。だから、自分でも自問自答しているところもありますね。「ホントに俺はこのバンドで、世界を取るって決めて始めたけど、本当にそうなのか、どうなのか」って。

今、自分の中ではいくつかの目標を定めています。まずは一つは、「ボクたちがバンドとして、ホントに年間30組以上の日本を代表するトップミュージシャンの方々とタイマン張って、生きて帰ってこられるのか」っていうのがテーマだなって思って。その先に、何ができるのかっていうことで、そこで初めて答えが出るかなあという気はしてるんですけど。今年がボクの中で結構大きな1年で、これから年末までとにかく信じられない量のGIGをやることになるんですけど、一つ一つのGIGで、少しピースがうまっていく気がしていて、すべてのピースがそろった時、いったいどういう絵が完成するのか。それは多分、来年のボクや再来年のボクを左右することになるのかなあというふうに思っていて。

対バン相手はジャンルレスですし、ももクロちゃんあたりはホントに勝ち目ゼロだなあと思いながら。でも、何かできるんじゃないだろうか。俺たちほど、「対バンモンスター」っていないはずだと。これまで、とにかく数多くのバンドさんと一緒にやってきて、そこで勝ち得てきたものって何かあるはずだと思って、それを取り戻すのか、それとも新たにつくるのか分からないですけど、そこの旅なのかなあと思いながら。なんか平和ボケしてた自分に気がついて。このままじゃいけないと思って。

自分たちを知ってほしいという以上に、自分たちを今応援してくれてるみなさんにちゃんと見てもらいたいというのがありますね。本当にすごいと言われている人たちと並べて、見てもらった上での評価をしてもらいたいと思いますし。新しい音楽を知ってもらいたいとも思いますし、自分たちのファンの人たちが偏るのはすごくイヤで。非常に「両刃の剣」的な行動を取ってると思ってるうんです。場合によっては、「あ、氣志團よりいいのみつけちゃった」ってなる可能性もありますから。でもそれでも構わないと思っていて。そんな事よりも「音楽って素晴らしいんだ」「ライヴって楽しいんだ」「ジャンルなんかにとらわれちゃいけないんだ」ってことを、多くの方に感じてもらいたいんです。そういう人達が今少しずつ減ってるから。そうすると、ボクらは必要なくなっちゃう。生簀の中の魚をみんなで取り合っているのが、昨今の日本の音楽シーン。それじゃダメなんです。ボクらは大海へ漁に出なくてはならない。そして、このシーンの活性化の為に、多くの素晴らしいミュージシャンの方々と交流を持ちたい。GIGでタイマンを張った上でね。我々みたいな生き物はステージの上でしか語りあえない部分がありますので。まずはその第一歩を踏み出したところです。

みんながかっこつけてるとき、かっこつけなくてもいい。そういう人間で子どもの頃から来てるんで。それこそ、ツイッターとかも、本当にイギリスのニュースとかで読んでいて、「ミュージシャンがツイッターやるとミュージシャン人生の寿命が縮まる」と。ロッカーってのはミステリアスさをウリにしているのに、ツイッターだと時間ごとに何をやってるわかってしまうっていう。本当にその通りだなと思うし、例えばアーティストさんや俳優さんのを見ていても、俺がファンだったらイヤかなと思うこともあったりはするんですよ。変な絵文字使ってるとか、この人こんな感じで普段生きてるのかなって。でも、合う合わないはそれぞれあると思うんですけど、ボクはもう全くそっちの方のジャンルにいる人間じゃないんで。ホントはそっちになりたかったんですけど。「ついに沈黙を破り、語った!」とか言われてみたいんですけど。

 

 カッコつけててカッコつけられるんだったなら、ホントはカッコつけたかったんです。本当はボクだって、「ああいうルックスに生まれられたらなあ」「ああいう人に生まれられてたら、そっちやりたかったなあ」って、人のインタビューとか見ながら思うんです。「いいなあ」って、心の底から。「俺がこの人だったらこういうことできたんだなあ」と思って。でも悔しいけれども、俺は全然そんなんじゃなく生まれてきてしまったので。女の子にモテるのも、バンドやってお客さんに来てもらうのも、黙ってても来てくれる人もいると思うんですけど、ボクの場合、黙ってたら、素通りされるだけの人間なんで、じゃあ何かしゃべらなきゃいけないと。人よりルックスが劣ってる分、人より面白いこと言おうとか。人より歌は下手かもしれないけど、その分違う何かができるんじゃないかとか。とにかく必死でいろんなものの穴埋めをして、なんとか一人前みたいになろうとする癖があるんで。実際問題、偽物なんだと思うんです。ただ、ジェロニモじゃないですけど、偽物もやり続けたら何かになれるのかなあ、まだ知らないからやってみよう、みたいなところはあるのかなと思うんです。

でも、本物じゃないからこそ、本物の人だったら、そこスルーしてもいいことも、我々はスルーしちゃいけないっていうのはあるのかもしれないですね。だから、本当だったら、本物の人たちはこんな細かいことまで話さないだろうなあって思うけど、やっぱり、照明の1個1個まで気にしてないと、始まらないんだなあ俺って、みたいな。「何で舞台監督と一緒に、誰々の立ち位置を一緒にバミったりまでしてるのかな」って思ったりもしますけど。単純に人に勝るものがないので、そこでしかもうないなあってのと、あと隙間産業ですよね。誰もやらないことをやろうっていう。誰もやらないことやれば、食いぶちぐらいあるんじゃないか、みたいな。「みんながトイレ掃除やだっていうんだったら、トイレ掃除じゃあオレやるよ」みたいな。そしたら、そこに、ほかの人がやらない分、ボクのところに仕事がくんのかなあというところはあって。ただ、それも付け焼き刃は無理なので、体の中にあるものしかやっちゃいけないっていうルールがあって。ヤンキーだとか、ツッパリだとか、真夜中の遊び人ていう部分だったりとか、あとはオカマていうのは、すべてボクの中にあるものなんで、すぐにでもなれるものなんですよね。そこに関しては自信があるから、人前でできるっていう。ちょっと違うキャラクターを、ただただやれと言われたら、例えばおたくキャラやれてって言われたら、たぶんできないんですね、自分の中にないんで。自分の中にあるものを切り売りして、どうやってこれから生きていくんだろうってことを考えながら、過ごしてはいますけど。

 自分もこれから、どこに行くんだろうと思いながら、この運命の旅を楽しもうとは思っているんですけど。今までだったらタブーだったこともすごくあったり、周りが心配したこともあるんですけど、自分の中でピンと来たものは、自分で行って楽しみたいと思ってますし。DJもすごく楽しいし、新鮮ですね。まあ恥かくときは恥かくし、やれるうちにいつか振り返って自分が楽しかったことっていっぱいあるといいなあって。それが節操がないって言われたら、そこまでなんですけど、自分の中で、ちょっと心が震えることには挑戦していきたいなあって思ってます。

(清)

このこぼれ話は、2011年7月27日の読売新聞夕刊に掲載したpopstyle「ALL ABOUT 綾小路 翔」でのインタビューで、紙面に載せきれなかった話を復活掲載しました。紙面はヨミープラザ(03-3217-8399)で注文承ります。詳しい購入方法はこちら(http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/yukan.htm)。popstyleは毎週水曜日夕刊のど真ん中の見開き2ページです。popstyle編集部へのお問い合わせはメール(popstyle@yomiuri.com)へ。ツイッターアカウントは、popstyle_yomi

★最後まで読んでいただきありがとうございました。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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