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すみません。脱出ゲーム<ブログ延長戦>やっと第2弾アップです。別の仕事で書く時間が取れなかったことが主たる遅れの原因です。が、自分自身がリアル脱出ゲームに対する思い入れが収集つかないほどまでになって、ついつい長く書きすぎてしまうのも要因の一つかと。こんなにダラダラ書いて誰が読むんだとも思うのですが、書かずにはいられないのです。

【延長11回】 結局場所しかない。場所なりの謎なり物語りを作るだけ(SCRAP・加藤代表インタビュー2)

 「あるドームからの脱出」は、東京ドームという特別な空間の中で、脱出ゲームを楽しむものだった。初参加の記者が意外だったのは、ドームはドームだったということ。つまり、ライブのようにステージが作られることもなければ、脱出ゲームっぽい装飾の一つもない。でも、だからといって、気分が入り込めないというわけでは全くないのだ。そのあたりの秘密を加藤代表に聞いてみた。

(インタビューから)

<記者> ゲームの演出としては、色々飾りだてするのではなく、あちらこちらに単純な問題文のボードを張り付けているだけ。それでも、参加者はみんなゲームの世界に入り込めるんですね。

<加藤> 結局のところ、物語感なんです。その人がその場所に来て、「さあ始めます。よーいスタート!」って言ったときに、「ドーン」ってどれだけテンションが上がっているかPhoto_2なんですよね。ただの会議室ならともかく、東京ドームは入っただけで、テンション上がるし、ゲームが始まって歩くだけで、さらにテンション上がるし、グラウンドに入れたら、またさらに上がるわけじゃないですか。別に装飾をやらないことをポリシーにしているわけではなくて。やらなくたっていいことはやらない。東京ドームってとこは、そのリソースがある。

<記者> 今度、ホテルでも初開催しますが、場所を変えることがかなり大事になってくるんですか。

<加藤> これは超大事ですね、結局場所しかないんで。結局、僕らってプログラミングの技 術があるわけじゃないし、デザインにしたって何にしたって、社内に持ってるわけじゃない。その場所に行って、その場所なりの謎なり物語なりを作るだけ。僕らがこうやって何十本とイベントを打てるのは、場所が違うからなんですよね。それ以外の要素って言ったら、結局考えている人間も一緒だし。そこで使っている技術みたいなものも、特別な技術がウチにあるわけじゃないんですよね。アイデアのネタみたいなものは、たぶん僕ら世界一謎解きイベントを作っている集団なので、ストックは山ほどあります。でも、お客さんがこんだけリピート率が高いイベントをやってたら、色々組み合わせながら作らなければならない。すごくラッキーだったのは、アイデアのためのネタを場所がずうっと提供してくれていること。場所が変わるということから発想しているので。

 開催場所の妙。そ__7ういう意味では、東京ドームは最高だろう。まず、ほとんどの人はドームの中をじっくり探検したことがない。ドームの中は、5万人を収容する広いスタンドがあり、あちこちに階段があり、コンコースも4階まである。ドームをあちこち回るだけで、非日常的な体験となるのだ。1回で1000人以上参加するというのは、脱出ゲー ムとしては最大規模だろうが、ドームにとって1000人は少数だ。5万人定員のドームの中を、1000人でウロウロするというだけで、あまりない体験だ。しかも、めったに入れないグラウンドに足を踏み入れることができる。展覧会などと違って、人工芝そのままの上に乗ることができるのだ。しかも、ゲームは、スターと前のじらす演出もうまかった。バックネット裏スタンドに集められ、何もないガランとしたグラウンドを見下ろしながら、これからどういうことが起こるのが期待に胸をふくらます。野球だったら、グラウンドには試合開始前に練習する選手がいるが、今は何もないのだ。降りられるのか、何か秘密があるのか、とグラウンドを見つめるだけでも、不思議な緊張感に包まれてくるから不思議だ。そして実際に、ゲームが始まると、ドームの隅々にヒントがあるので、普段行ったことのない場所にも行くことになる。「こんな場所もあったんだ」と、何度か訪れたことのあるドームで、様々な再発見がある。

 また、ドームの構造上の特性が、謎解きイベントに向いているともいえる。特にコンコースは、風景がどの階も似通っているため、自分がどこにいるか分からなくなってしまうことも。しかも、たくさんの看板があったり、展示物があったり、売店があったりと、参加者を惑わすモノもたくさんある。そういうドームに元々あるものは、実は謎解きにはほとんど関係がないのだが、どうしたって気になってしまう。

 そんなドームの利点をあるがままに利用するため、脱出ゲームとして新たにドームに加える仕掛け__8 は、問題ボードを張るぐらい。壁、喫煙室、ベンチの天井など、その場所は様々だが、いずれも白地に黒のシンプルなもの。準備も簡単だろうし、ドームも傷つかない。実際、東京ドームの担当者の方は、このイベントを大歓迎していた。ライブなどは、準備や撤去に前後丸1日かかってしまうが、このゲームならば当日でほとんど出来てしまう。実際には、1日はスタッフによるリハーサルが行われたというが、撤去作業は1時間で終わったという。しかも、東京ドームの担当者が関心していたのは、これだけドームをぐるぐる回ったりグラウンドに入り込んだりするイベントなのに、参加者のマナーがいいということなのだ。それはそうだろう。参加者の人は、純粋に脱出ゲームを楽しみたいという人ばかり。ドームを汚したり何かを壊すような逸脱行為が、せっかくのゲームに水を差すことを一番よく理解しているのだ。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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