今週のpopstyle紙面「注目ワード」で紹介した「リアル脱出ゲーム」。記者は、東京ドームでの1時間の謎解きに参加したルポを一応、掲載した。うーん、でも、まだまだあの時夢中になって謎を解いていった興奮、脱出できなかった悔しさ、そして謎解きの正解発表でグゥの音も出なかった思いを、伝え切れていないなあ。そう、記者はまんまと脱出ゲームの魅力にはまりこんでしまったのです。ということでブログで延長戦を試みてみました。仕掛け人であるSCRAPの加藤隆生代表のインタビューからも、絶妙なコメントが取れているんですコレが。長くなりますが、おつきあい下さい。
【延長10回】ゲームは、バランスだ。キモは没入感!(SCRAP・加藤代表インタビュー1)
5月6~8日にかけて行われたリアル脱出ゲーム「あるドームからの脱出」。記者は、5月8日午後1時半からの回に参加した。ゲームの仕掛け人であるSCRAP代表のインタビューに、当日のゲーム回顧を交えつつ、その絶妙なゲーム作りの裏側に迫ってみたい。
(インタビューから)
<記者>とても、楽しませてもらいました。脱出はできなかったけど、途中まで問題をクリアしていけたから、ある程度の満足感も得られた。でも、よく考えたら、最後まで解けなくても満足させるという難易度のバランスがうまく設計されているのかな。そう思ったら、SCRAPさんの術中に完全にはまっているな、と思いました。
<加藤>バランスは、最も重要なことの一つですね。謎解きゲームを作っている人のほとんど の人たちが、バランスで失敗するんですね。まあ、作っている人なんてほとんでいないですけどね。そのバランスの基準は「没入感」なんです。いかに、エンターテインメントに入り込めるスピードで、問題が配置されているのかということだと思うので。ただ、変なもんで、バランスは気にしすぎてもダメ、みたいなところもあって。ゲーム始まる前に考えていたバランスとゲームが始まってからのバランスとでは、想定とは違う。お客さんの動き全部を想像できるもんじゃない。やってみて、お客さんのリアクションを見ながら変えていくってのはありますね。一度決めたことに対して、どんだけ身軽でいられるかっていうのは、すごく重要。それは、多分プレイヤー側にもい大事だし、こっちの制作側にもすごく重要なこと。
(ここまでインタビュー引用)
記者の絶妙だと感心した東京ドーム公演のバランス。今回の謎解きには3つの難易度の違うステージ があると考えていいだろう。第1ステージが、解答用紙のA~Eの5つのキーワードを埋めていく作業。これは、オーロラビジョンに映し出されたヒントを手がかりにして、まず場所を探す作業があり、たどり着いた場所にキーワードを埋めるための「本当の」ヒントが書かれている設定だ。加藤の語るエンターテイメントに入り込めるスピードは、まさにこの部分。ここはひたすら、速さが重要になってくる。なぜなら、ヒントの場所が散らばって配置されているから。例えば、Aのヒントの場所は、1塁ベンチと3塁ベンチのそれぞれ奥にあるエキサイトシート。観客席からする と最前列をほぼ 両極に移動しなくてはいけない。Bが示す場所も、1Fの両端にある喫煙室だ。Dのはためくものは、バックスクリーンにあった。Eのヒントは、4F全体にわたっているのだ。この場所を探ること自体は、それほど難しくない。分からなくても移動でき る場所をくまなく探せば、いつか行き当たる。しかも1000人以上いる他の参加者の動きが、おのずとヒントになる。だから、どう考えても、最初にスタート地点で「うーん」と立ち止まって思い悩むことにはならない。すると、スピード感をともなってゲームの中に没入していくことになる。しかも制限時間は1時間しかない。紙面でも紹介したBの問題を見てみよう。これは、両端の喫煙室にあるので、どっちも見ないと意味が分からないが、並べるとすぐ答えに結びつく。2つを合体させ、縦に読むと「かみこつぷにいとをつけておはなし(紙コップに糸を付けてお話)」で、「いとでんわ(糸電話)」だ。解答用紙を見ると、Bは5マスだから、ぴったりはまる。
第2ステージは、A~Eまですべてが埋めることができてから。A~Eが埋まると、マスに書かれた小さな数字を対応させて、解答用紙の下部にある5×5のマスを埋めていくことになる。だが、埋めてみて、どう読んでも意味のある文章にはならない。ここで記者も立ち止まった。しかし、既にそのとき、下のグラウンドに降りている参加者が多くいる様子が見えたため、グラウンドに降りていいのかもと気付いた。順番が前後したが、A~Eの問題を解けた場合、地図に青いマークで記された「解答照合所」に行くと、解答用紙上部にあるA~Eのマスに、「×」マークを付けてもらえる。Eのヒントがある4Fに行く階段には、スタッフがいて「×」が4つないと通してもらえない。同様にグラウンドに降りるためには、「×」が5つなければ階段を通してもらえない。記者は何の疑問ももっていなかったが、モデルの井口玲音さんは「何で正解なのに、○じゃなくて×なんだろう」と気になっていたそうだ。鋭い!それは大きなヒントになったはずだったのだが。
読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。