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こんにちは、こんばんは、おはようございます。popstyle編集長の森田睦です。

今回は、年末恒例となっております、月1連載「タカラヅカ 新たなる100年へ」を担当している山田恵美記者、小間井藍子記者による宝塚座談会をお届けいたします。

2020年、コロナ禍で中止、延期を余儀なくされた舞台もあり、多難な1年でした。

そんな中でも、タカラジェンヌたちは稽古を重ね、たくましく、華麗にエンターテインメントを届けてくれました。2人の記者は今年の宝塚をどのように総括するのでしょうか。今回は前編です。

それではどうぞ。

読売新聞水曜夕刊ポップスタイル第3週の好評連載「タカラヅカ 新たなる100年へ」を担当する2人の記者が宝塚この1年を言いたい放題振り返ります。(注・ネタばれを含みます、東上公演中心、あくまで記者個人の感想です)

恵美(以下、恵)…宝塚歴4年目に入り、愛が加速する40代♀

藍子(以下、藍)…宝塚版「スリル・ミー」を夢見る3児の母♀

 

 

★コロナに翻弄された2020年

 

藍 ♪あなたは何回言いました? 「ウェルカムッウェルカムッ!」「ノゾミー!ノゾミー!」

恵 「あなたの夢はなんですか」(「WELCOME TO TAKARAZUKA ―雪と月と花と―」の「それが宝塚」より)でしょ?

藍 シンプルワード連呼の歌詞は終演後、思わず口ずさんでしまう。インパクトの点において宝塚的大勝利の証し。連呼すれば免疫がつくような気がして。

恵 劇場内では感染防止のためお静かにお願いしますね。2020年の宝塚はコロナに翻弄された1年になってしまった。

藍 舞台上に設置されたバーカウンターからタカラジェンヌがどんどん降りてきて「宙組生500人くらいいるんじゃないの?」とワクワクしたお正月公演の宙組ショー「アクアヴィーテ(aquavitae)!!~生命の水~」。2020年の作品だったとは思えないほど遠い昔のよう……。

恵 ちょっと、500人って、全タカラジェンヌ数を超えてるわよ。各組70人超のメンバーがずらりと並ぶ「密」な舞台こそが宝塚の魅力なのよね……。

藍 公演が途中で中止となったり、初日がなかなかあけられなかったり全5組それぞれが傷つき、痛みを抱えたんじゃないかしら。

恵 約4か月にわたる全公演休止期間はこたえたわ。再開するにあたっても、あらかじめ声を録音しておくプレスコを使ったり、デュエットダンスは2人のディスタンスを広くとる振り付けを多くしたり、様々な工夫をしていたと思う。礼真琴、舞空瞳の星組新トップコンビ大劇場お披露目公演「眩耀(げんよう)の谷 ~舞い降りた新星~」を生で観劇したときは、ジーンときました。

藍 生が一番なのは言うまでもなく、劇団もこれまで公演全編の生配信には慎重だったけど、花組「はいからさんが通る」で中継配信を解禁。

恵 フィナーレを配信するなど、準備はしていたようだけど。コロナで一気に定着したわね。自宅でリアルタイムで見られるなんて夢のよう。値段もB席と同じ価格で、関東にいる身としては関西の公演も遠征せずに見られるのはうれしい。

藍 その前に雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」は東京千秋楽のライブビューイングすら中止にし、CSのスカイ・ステージで生中継。

恵 歴史的な瞬間を目撃しているような厳粛な気持ちに。映画館で観客が密になる空間を避けたいとの劇団の意思を感じたわ。

藍 コロナと関係あるのか分からないけど、インスタグラムやLINEの宝塚公式アカウントが今年作られた。インスタでは外出自粛期間中、タカラジェンヌがメッセージを発信。品良くユーモアセンスを発揮した綺城ひか理に「やるな」と思ったわ。

恵 具体的なエピソードにパンチがあって、思わず吹き出しちゃった。

藍 そして久々の生の舞台で見たタカラジェンヌたちがブラッシュアップされているのにびっくり。

恵 「清く正しく美しい」人たちは外出自粛期間中も鍛錬し続けていたのね。みなさん、さすがの自己コントロール力。

藍 コロナ太りした我が身を反省したわ。

 

【作品賞】

  • 本公演部門  雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」(恵)

        月組「ピガール狂騒曲」(藍)

     次点 花組「はいからさんが通る」

        星組「Ray ―星の光線―」

恵 「ONCE―」は雪組トップスター望海風斗の集大成なのでは。男役の格好良さの表現として、新たな地平を切り開いたのでは。1幕ラスト、長年思い続けた女性にきっぱりと拒絶されるシーンが最大の見せ場となるトップスターが、過去にいたでしょうか……。

藍 格好悪いのが最高に格好いいって思ったのはスタジオジブリの「紅の豚」以来だわ。

恵 そうなの……。望海のコンサート「NOW!ZOOM ME!!」の、名場面をつなげた映像にも感じたけれど、殺陣の最中に白目をむいたり(「星逢一夜」)、床にはいつくばって銭を数えたり(「壬生義士伝」)、ぶざまな姿をさらけ出して、観客の心をつかんでしまうトップスター。美しく演出されるのが一般的なバラの花を、引っつかんで床に投げ散らしたのにも「おぉ!?」と思った。脚本・演出を手がけた小池修一郎と作り上げた“孤高のダンディズム”にしびれました。でも小池さん、マックス役は、もう少しカッコ良く作って欲しかったです……。

藍 恵美さん、あの映画もともと大好きだったものね……。簡略化して分かりやすくなったのはいいけど、脚本上、マックスをドジな小悪党にしてしまった。演じた彩風咲奈自身は健闘していたと思うわ。私が納得いかないのは映画の名曲「アマポーラ」を使わなかったことよ。だいもん(望海)が歌う「アマポーラ」、聞きたかったなぁ。その点、月組の「ピガール」は「ムーラン・ルージュの唄」という昔の映画にも使われたシャンソンの名曲を効果的に使っていたと思うの。

恵 フィナーレで暁千星が銀橋で歌ったのも最高だった。この公演、ありちゃん(暁)の色気がマシマシになっていて、客席で白目をむきそうになりました。「ピガール」は有村淳の衣装も素敵だったわ。くすんだ色のトリコロールでまとめたパレードは、まさに宝塚。

藍 一つ注文をつけるなら劇中の「ときめき」が足りないことかしら……。

恵 それなら花組「はいからさん」は萌えの宝庫だったよね。壁ドンにお姫様抱っこにおんぶ、フィナーレは黒燕尾と軍服の2パターンを用意されたら両方行かなくては、という気になっちゃう。

藍 原作では「もう忘れます」というヒロイン紅緒のせりふを冬星の「全部忘れさせてやる……」に転換させた小柳奈穂子は天才だと思ったわ。「Ray」はフィナーレからの流れが神がかっていた。公演再開に聞く「ユー・アー・マイ・サンシャイン」、新トップ礼真琴を星組カラーのブルーのドレス姿の娘役たちが囲む大階段でのダンス。リチャード・クレイダーマン「星のセレナーデ」のアレンジをバックにしたデュエットダンス。目の前で繰り広げられる光景のあまりの美しさに涙が自然と流れたわ。

 

  • 別箱部門 花組「DANCE OLYMPIA」(恵)

      星組「シラノ・ド・ベルジュラック」(藍)

   次点 雪組「炎のボレロ」

恵 「ダンオリ」は、花組新トップスター柚香光のプレお披露目公演。ストリート系から、フレッド・アステアを思わせる優雅なデュエットダンス、本格的なタンゴなど、ありとあらゆるダンスを踊りまくり! 新生花組の船出に期待が高まりました。

藍 太鼓とかも叩いてたよね? タカラジェンヌってなんでもやるんだなって改めて尊敬の念を抱いたわ。私は配信で見た轟悠主演の「シラノ」を。

恵 シラノって鼻が大きくて器量の悪い男という設定。それをあえて、「ギリシャ彫刻」とたたえられる美貌で知られる轟さんに当てたのがニクい。

藍 そうなのよ、それが肝なの! イケメンのクリスチャンに代わってロクサアヌに手紙を送るシラノには文才がある。その文才の美しさを表面化させたのが轟のシラノなのよ。演劇的表現なのよ。見た目はそうでもないけど、せりふで「美しい」と褒め称え観客に美しさを想像させる舞台はいくらでもある。逆にせりふで醜さを補わないといけないなんて宝塚でしかありえない。

恵 熱く語るね……。本当は全国ツアーのはずだった「炎のボレロ」。千秋楽を配信で見ました。咲ちゃん(彩風)とあーさ(朝美絢)との歌のかけあいシーン、いいよねー。堂々と主演を務めた咲ちゃんがカーテンコールで「愛媛県のみなさーん見てますかー。次は絶対行くけんね」と呼びかけるギャップにほろり。来年は行けるといいね。

藍 ところで、祭りが終わった翌朝の場面で、スズメが「チュンチュン」鳴く音、聞こえました? 「朝チュン警察」の私はもちろん聞き逃しませんでしたよ。

恵 何? その「自粛警察」みたいなのは。意味がよく……。

藍 朝チュンにややピンクがかった照明は「何か」があったってことですよ。

恵 考え過ぎじゃ……。それも、宝塚ならではの演劇的表現?

読者の皆様の中にも2020年最も印象に残った作品、スターはいると思います。

そこで、アンケート「あなたが選ぶ 宝塚歌劇団 2020年最優秀作品」 「あなたが選ぶ 宝塚歌劇団 2020年最優秀スター」を行います。

https://qooker.jp/Q/ja/popstyle/taikai/

↑のフォームから投稿をお願いいたします。1月3日午後11時までです。

プレゼントはありませんが、後日、popstyleブログで結果などをご紹介いたします。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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