Pop Styleブログ

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第4章 布教

  だからこそ、俺たちがなんとかしなければと思った。Perfumeのような本当に素晴らしい音楽をやっているアイドルが、売れずに消えていく様を何度Photo_5も目の当たりにしてきたんです。Perfumeって本当にいいグループだったねと、後で語り継ぐだけのものにするには惜しすぎた。今度は多少なりとも尽力できる立場にある。スタッフでもないのに、どうやったらPerfumeが売れるかを本気で考えなければと思ったんですよ。俺だけじゃない、Perfumeのファンはみんな同じでした。当時からファンの人に会うたび、みんなが「どうやったら売れますかね?」って、所属事務所の人間でもない俺に聞いてきた。こんなアイドルは初めてですよ。

 まず、今までのように秋葉原の中だけで売っていてもしょうがないだろうと。その頃はまだ、秋葉原を中心としたアイドル数組が出演するイベントを主戦場にしていたんですが、それだけだと広がらないし。秋葉原っていうだけで行きづらい
人がいっぱいいるわけじゃないですか。秋葉原のイベントには基本的にアイドルヲタの人しか来ない。会場の雰囲気が濃すぎて、まず外の世界から入っていけないですよね。アイドルヲタ以外の人にも自信を持って勧められる音楽をやってるんだから、そこはもったいないよと。ちゃんと人目のにつくところに出すのが先決だと、まず自分がよく出演しているライブハウス「新宿ロフト」にブッキングしたんですよ。RAM RIDERだとかNIRGILISだとか、打ち込みとバンドスタイルが合体したような、クラブサウンド風の音楽とワンセットにしてみたら、多分そこからもお客さんが流れてくるんじゃないだろうかと企画を立てて。行きがかり上、自分のバンド「ロマンポルシェ。」も一緒に出て。丁度、「コンピューターシティ」(メジャー2nd、06年1月)が出て、ある一定の音楽的な路線に向かっての完成度っていうんですかね、テクノ的な感じがどんどん上がってた時期だったので、思った以上に受け入れられましたね。

 雑誌媒体では、自分が連載してる雑誌「テレビブロス」に紹介してみました。目に触れる機会さえあれば、あとは今インターネットでどんな音楽なのかを知ることができるじゃないですか。「いいですよ」と薦められてもその実像を確認するまでが、今までの時代は大変だった。だからこそ、マスコミをちゃんと利用しなきゃいけなかったんだけど、今はネットさえあれば、情報の実体をマスコミのフィルターなしに自分の目で見て正当に評価することが可能になっている。動画だけを見て、音楽だけを聴いて評価することができたというのは、今の時代に
ちょうど乗ったというか。そこは幸せだったと思いますね。

 宇多丸 YouTubeとかニコニコ動画とかの発展と無縁じゃないことは間違いない。

  多分、その恩恵を一番受けたのがPerfumeじゃないかと思いますね。写真と文字情報だけで見てると、実はそんなに伝わらないグループでもあるから。その後も細々としたものでありながら勝手に多方面にプロモーションしていきました。それが最終的に、木村カエラの世間的影響力のあるプッシュなり、AC(公共広告機構)のCMなりにつながっていったのなら、これに勝る喜びはないですよね。恫喝まがいなまでにあちこちでPerfumeをプロパガンダしてきたかいがあった。

 宇多丸 「これがわかんないようなやつとは音楽の話したくない。これを否定するってことは、おまえには音楽が聴こえてないってことだ」みたいな。「田舎者には聴こえません」みたいな(笑)。

  制作スタッフの中でファンがいたが故に仕事を依頼されるパターンって、Perfumeの場合結構多いと思うんですよ。例えば、こないだの「QUICK JAPAN」もそう。いつもなら吉本などの売れっ子お笑いタレントの特集をやっている雑誌が、異例とも言える大特集をして、おまけに表紙にまで持ってきた。あそこにもPerfume好きなスタッフがいて、「なにがなんでも特集を組みましょう!」みたいな感じだったと思うんですよね。この読売新聞さんにしてもそうですし、やっぱりPerfume自体が面白いからこそ取り上げてみよう、いや、ぜひ取り上げさせてくださいみたいな、そういう状況が生まれてます。

 俺が「テレビブロス」の担当編集者に持ち込んだときもそれが顕著で。「こういうアイドルがいまして、CDリリースしましたんで、ぜひインタビューしてください」と言っても、本来アイドルを取り上げる雑誌じゃないから「え、なんでですか? なんでそんなことしなきゃいけないの?」みたいなリアクションしか得られなくて。「じゃ、わかりました。CD送っといてください」と、気のない感じで言われたんですよ。ダメだなこりゃと思って。でも、CD送ったら編集者から電話がかかってきて、「CD聴いたんですけど、すごくよかったです! ぜひ2ページ見開きでやらせてください!」って。

 まったく興味のなかった人たちの顔をこちらに向けさせるだけの強度を持ってる音楽ですよね。マスコミ側の人たちが、自分たちが好きだからしがらみに関係なくPerfumeを出してあげようみたいな動きはよくある。マスコミにファンが多い。だからといって、ミュージシャンズ・ミュージシャンみたいな感じでもない。それこそパソコンで読売新聞の記事書きながらでもYouTubeカチッとか、ニコニコ動画カチッとかね(笑)、噂を聞いたらワンクリックで確認できる。で、確認したらやっぱりよかった、「じゃ、特集しましょう」って簡単に事が進む。いい時代になりましたね。

 俺、ずっとトークショーとかの司会で一緒に回ってたんです。3人だけで間が持つか?みたいなことを事務所さんが思ってたみたいで。俺はあの頃でも3人のしゃべりだけで十分できたと思うんですけど、やっぱりまだアウェイな環境に出て行ったとき、外部の人間が話に加わった途端、発言がかしこまって優等生的になってしまう傾向があったんですよ。で、あえて外部の人間として入ってみて、いろんなことをやらせて場数を踏ませてみようと思って。大喜利だとか無茶なことばっかりやらせてね。その結果、あ~ちゃんは当初から天才的なトークの能力を持ってたんですけど、多分のっちとかしゆかのトークのスキルは上がったんじゃないですかね。

 宇多丸 それでさらに全体のバランスが良くなった。

  掟が入るぐらいだったら私たちだけで頑張ろうみたいなことでもあるかもしれないし、あるいは、あ~ちゃんのしゃべりにつっこんでいいんだとか、どこをつっこめばいいんだみたいなものは若干提示できたかなと思います。そういう意味では、やっぱり一緒に仕事してみて無駄じゃなかったですね。まぁ、第三者が入らないで3人で野放しにしゃべらせた方が面白いのでアレなんですけど(笑)。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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