一昨日の紙面で特集しました細田守監督の最新映画「未来のミライ」、本日公開になりましたね。日本テレビ系では公開を記念して、細田監督のフリー初の作品として彼の名を世に知らしめた「時をかける少女」が放送になりました。作品中では、「アテスウェイ」というケーキ屋さんのケーキが登場しますね。東京・吉祥寺と西荻窪の間にある名店なのですが、こうして何気なく知る人ぞ知る固有名詞をサラッと出してしまうのも、細田さんらしさなのかもしれません。ツイッターを見ると、本日の放送を見て改めて「アテスウェイ」と言われていたことに気付いた人もいるようです。12年前のpopstyleでの細田監督のインタビュー紙面では、監督自身がアテスウェイについて言っているのですがね。
聖地巡礼がはやってますが、アテスウェイも細田監督の聖地と言ってもいいかもしれません。今日は、こういう固有名詞と聖地の関連を少々つづってみたいと思います。聖地近接と言ったらよいのでしょうか。
「アテスウェイ」のように、名店の名をそのまま何気なく使っている例は映画だけではありません。名曲の歌詞の中にも登場するんですよね。特に、有名なのは、これはユーミンの名曲「海を見ていた午後」の舞台となったレストラン「ドルフィン」ではないでしょうか。
「山手のドルフィンは 静かなレストラン 晴れた午後には 遠く三浦岬も見える」
この歌が発表されたのは1974年のことですが、ドルフィンも現存しています。このブログの筆者(細田守特集記事の筆者とは違います)は、6年前に日曜版の「名言巡礼」という企画で、「海を見ていた午後」を取り上げてこの周辺地域を詳しく取材しました。残念ながら今のドルフィンは、ユーミンが高校生の時に訪ねた店とは経営者も建物も変わりました。高台にあって海の眺望も良いはずなのですが、多くのマンションが立ち並び、当時の風景とは随分違うようです。それでも、この場所からユーミンが本当に海を眺めて、一つの恋愛物語を描いたんだと思うと、胸が熱くなります。
さて、何の話をしているんだ、と思われる方もいると思うので、細田監督の話にも戻しましょう。実は筆者が、「未来のミライ」を見て驚いたのは、映画の舞台、つまり主人公一家が住む家がこの「ドルフィン」周辺だったからなのです。特に、主人公くんちゃんにとって重要な場所、お父さんと自転車に乗りに行く場所が、ドルフィンから目と鼻の先にある「根岸森林公園」なのです。映像を見てすぐ分かりました。この公園は戦時中に使われなくなった競馬場の一等観覧席の遺構があり、広い芝生の向こうに何とも言えない迫力でたたずんでいるんです。こんな場所ほかにないです。この元競馬場は幕末からあり、遺稿自体は昭和初期に作られたものなので、実際にその場所に行くと歴史の息吹をいやおうなく感じられます。だから、尚更感動しました。筆者に限らず訪れた経験のある人は、過去や未来に行く映画に使おうと思った細田監督の気持ちに共感するものがあるのではないでしょうか。
ちなみに、私が担当した名言巡礼の関連動画がまだネット上に見られる状態にありました。
https://www.yomiuri.co.jp/stream/?id=01719
序盤で出てくるのが「ドルフィン」。そして、3:00~に少しだけ登場するのが根岸森林公園です。細田監督とユーミンの関連はよく分かりませんが、細田監督が根岸森林公園に訪れたとしたら当然ながら、ドルフィンの存在も分かるはずです。もしかして、ドルフィンをきっかけに根岸森林公園の存在に気付いたかもしれません。そんな想像を楽しんでしまいます。
いずれにしても、二つの聖地がこんな近隣にあるのは珍しいですよね。
まだ映画を見ていない方には、ぜひ映画の前に根岸森林公園へ訪れることをお薦めします。この場所の雰囲気を味わったり、歴史が頭に入っていたりすることで、作品中のこの場面の重要性や細田監督がどうしてこういう話の流れにしたのかが、少し分かるはずです。
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