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小島慶子掲載後記3

2011年8月24日

インタビュー起こしからの2つ目は、小島さんが常に感情をあらわにして自分の気持ちをぶつけるという態度に触れたときのコメントです。先ほどの震災についての話のとき、小島さんは途中から涙ぐみながら語ってくれました。インタビューで、感情をほとばしらせ本気になって語ってくれたんです。そんな小島さんに、私は感動しました。そして、いつもラジオを聴いていても、同じものを感じていたことに気付きました。小島さんの感情をあらわにした声を聴くと、小島さんの表情や態度までありありと分かるんです。今、泣いてるな、今、本気で怒っているな、今、のけぞるほど笑っているな、と。目の前で語る小島さんは、そう想像していた通りでした。

<小島> だれだって、そのように、自分の気持ちを言っていいんだっていうふうに思えるのが、自由な世の中ですよね。

でも、今とても言える道具はこんなに増えたのに、ツイッターとかフェイスブックとかスカイプ、道具が増えれば増えるほど、商品になる意見、正解の意見以外は価値がないっていうふうに、どんどん思い込みが強くなっていくんですよ。

どうしてかっていうと、発言できる道具ができたときに、もっとも簡単にできることは悪口だからです。子ども見てたって分かりますよ。自我の目覚めがあってね、5歳ぐらいになって、すごく自尊心が高まってきたり、最初にやることは「ダメ出し」ですよ。「ダメ出し」ってすごく初歩的で、全然高等なことでもない。一番安易にできるのは「ダメ出し」と悪口ですよ。だから新しい道具が出ると、だから最初にそれが蔓延してしまう。そうすると、せっかく自分の取るに足らないかもしれない、絵にならないかもしれない、でもこれを言ったら誰かとつながるんじゃないかと思って恐る恐る言葉にしようと思ったことが、ことごとくなぎ倒されていくわけです。駄目出しされて。価値がない商品になってないって。それで、誰もいえなくなる。結局、ものを言う時には、あらかじめ商品になっているものを受け売りするか、あるいは徹底的に「ダメ出し」をして、「ダメ出し」っていうのはリスクとりませんから、ダメをだしてケチをつけておけば、それが失敗した時には「だろ~」ってなるし、それが人気を得たときにも人気のアンチであるという居場所を確保できる一番安易な方法ですから、その意見ばかりがまかり通ってしまう。

だから手段は増えても、居場所はどんどん狭くなるんです。だから、ぜひそんなものには負けないで、あなたしか知りえない、ほかの人から見たらさえない日常だけど、あなたしか知りえないあなたの実感というのは十分価値があるんだ。それにあなたの実感に価値がある社会というのは、あたな以外の人の実感にも同じように価値があって、その価値は同じなのよ。つまり、ドラマになるような大事件の中で悲嘆にくれている人の悲しみも、飼い猫が死んで悲嘆にくれているあなたの悲しみも価値は同じなんだ。両方代えもきかない。価値も同じで買えが聞かないというものが、自分と他人の位置づけになるっていう世の名が一番自由だし、誰にとっても居場所のある世の中だって私は思うんですね。

そういう世の中を作っていこうよ。そのための道具がこんなにあって、自分を認めてほしい、他人ことも認めたい、それでできれば共感したい、という欲望がこんなに高まっているのに、そのための手段がこんなにあるのに、結果としてこんなに不自由になってる世の中おかしいじゃないか。だからどうか、さえないもの絵にならないもの商品にならないもの、わかりやすい物語でないものに駄目を出されても、そんなものを気にしないでほしい。そんなものを気にしなければ、あなたによって励まされる人とか、気が楽になる人もいっぱいいるし、同様にあなたのことを、それでいいんだよ、あなたの悲しみも、もっとも私の悲しみも分かり合えないけど、でもどちらも悲しみであることは同じだよね。じゃあ肩を抱き合おうかといってくれる世の中になるんだから、そうしようじゃないかということを言いたいんです。

(了)

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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