お久しぶりの(央)です。そう、3連休のど真ん中、昨夜はとことん「怪談」超ビッグ対談を行いました! これの詳細はもうちょっと先になりましたら明らかにいたしますのでお楽しみに〜!
と、言いつつ先にちょっとだけ裏話をご紹介(笑)。日曜日の新聞社内はごく一部のフロアだけ活発ですが、後は無機質で殺風景、ひとっこ一人いない巨大な廃墟のような状態。”怪談“に関し超大物なお二方ですが、それぞれを別個にご対談の場までご案内する途中で「これは怖い雰囲気ですなぁ」、「うわぁ…ホラー映画の舞台にできそうだ…」とお二方ともおっしゃっておいでだったのが印象的でした。自分にとっては珍しい風景ではないので「なるほど!」と思ったり。日常なんでもない、と思っている何気ないことでも見方を変えると「恐怖」が立ちのぼってくるものかもしれませんね。読売新聞社ロケでホラー映画が撮られたら、なんて楽しい想像をしてしまいました(笑)。 ところで昨夏には「恋ナビ対決」で肝試しデートプランを紹介したり、秋には昨年から今年にかけ、推理作家協会賞受賞・「このミステリーが凄い!」日本編1位獲得と大ブレイクしたホラー作家の平山夢明さんを、冬には恐怖漫画の巨匠・楳図かずおさんを見開きで大々的に特集したり…と、なぜかホラーづいてる私。ご想像の通り怖いものだ〜い好きっ子なのであります(笑)。 グリム童話にも「怖がる事を知りに出かけた男」の話があります。お化け屋敷や怖い本などでヴァーチャルに「もっと、もっと、ゾッと」したい、と考えるのは人間だけ。つまりあえて怖さを求めるのは文明の証、大人の余裕…と言ったら言い過ぎ? でも本当に心からそう思うんです。
さて、そんな私から今強力に皆様にオススメしたいのが、前述、平山夢明さんのライフワークでもある「実録怪談」の新作2冊。小説ではなく、実際に人から聞き書きした怖いお話をまとめたものです。本屋さんのみならず、コンビニなどでも手に入る…むしろコンビニの方が手に入りやすい?ような、たぶん一般的な書籍よりは「軽い」扱いをされがちな文庫本…でも侮れないんですよ!!!!
1冊は竹書房文庫の『「超」怖い話K』(アルファベットの「ケー」でなく、ロシアのキリル文字で「カッパ」と読むそうです)。初めの版元倒産などを経て不死鳥のごとく甦り、今の版元さんからだけでも10巻めに当たる人気シリーズ。本作が初の平山さん単独著となります。
もう1冊はハルキ・ホラー文庫からのこれも人気シリーズ「怖い本 7」。
…表紙だけでもイヤですね怖いですね〜!(笑)
さて、平山さんと言えば昨年評価された初短編集『独白するユニバーサル横メルカトル』、第二短編集『ミサイルマン』のような、強烈に視覚嗅覚にまで訴えて来る具体的かつ緻密な恐怖・グロテスク描写が有名ですが、それだけが持ち味じゃないんです。ゾッとさせられるばかりでなく、予想外にジワっと涙腺が緩んでしまうような家族の情愛に満ちたお話、とぼけた民話風味の狐狸妖怪ばなしもこれらの本には詰まっています。また1編が全て関西弁で書かれていたり、1ページで終わる超ショートショートがあったりと、小説作品とはまた異なる野心的かつ遊び心に満ちた試みがぎっしり。 「ALL ABOUT」にご登場頂いたときも”(子供のことは)守らなきゃ、というモチベーションが働く”、と語っておいでだった平山さんらしく、『「超」怖い話K』のラストを飾る1編「上へ上へ」や、『怖い本 7』の1編「ふたりかあさん」などは幼い子供への慈愛、切なさ、優しさが短くも丁寧に発揮されています。また『怖い本 7』の「残り水」は文体からして内田百閒 『東京日記』を彷彿させ、悪夢的な不条理さを醸し出しています。
平山さんは昨年大ブレイク、それまで「賞」と無縁だったわけですが、作家としての注文が殺到する中でも聞き取り怪談を記録し続ける姿勢に変わりはないようで安心しました。
「(話の提供者と)直接会う時間が取れなかったから」収録できなかったお話もまだあるようで、ネットやメール全盛のこの時代に、「フェイストゥフェイスで語り合い、聞き取る」地道な作業を大切にされておいでなのが伝わってきて、つい多忙に紛れ簡単な取材方法の方に流れがちな我が身を省みて身が引き締まりました。
正直、「コンビニ本だから」、とか、怪談本を手に取るなんて子供っぽいから…という理由でこういった本を読まない方も世の中多いんじゃないかと思います。でも、「ジャンル」や体裁で食わず嫌いするのは絶対損! ぜひ一人でも多くの方に読んで欲しいと思います。
…ところで、「一番怖い」エピソード… 実はハルキホラー文庫からは同時発売で「怖い人 1」が刊行される予定だったのに、余りの平山さんの遅筆のため、インクが乾かなくて1冊遅れて刊行されることになっちゃったそうです…ご本人ブログによると!(笑)
これは記者としては「見習わない」ようにしないといけない部分かな(笑)。
|