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宇宙飛行士 若田光一との対話ブログ 小林麻央さんとの対話

宇宙に届いた、リンゴ可愛や(メッセージその2)

2009年9月14日

 宇宙と地上の環境は、もちろん重力のように目立って違う点がありますが、戻ってきてみると様々な再発見があります。

Wakata02_2  帰還直後の第一声で地球の草の香りについてコメントしましたが(参考3)、普段の地上の生活で私たちが何気なく感じていることの一つ一つが帰還後には新鮮に感じられました。

 ISSでの生活は快適でしたが、閉鎖環境なのでどうしても感覚は単調にならざるを得ません。ロシアのプログレス貨物輸送機で運ばれてきたリンゴのにおいがとても懐かしく感じたことを覚えていますが、地上の素晴らしさは比較になりません。風の響き、鳥の声、湖畔の水の音、そして妻の料理のにおい……。

 帰還後のあいさつ時に、「There is no place like home(我が家に勝る場所はない)」と述べましたが、やはり私たちが一生懸命働けるのは家族の支えがあってこそだと思います。自分を支えてくれる様々なもののすばらしさをこのように再認識できたのも宇宙長期滞在ミッションの余禄といえるでしょう。

コミュニケーションとアイデンティティーの大切さ

 最後に、私が宇宙飛行を通じて得たもののうち、日本の将来を担う若い皆さんに特にお伝えしておきたいのは、充実した仕事を行う上での二つのポイント、「コミュニケーション能力」と「自分のアイデンティティー」の大切さです。

 私が滞在していたISSは、史上最大の国際協力科学プロジェクトの成果であり、その本格的な利用が進められつつあります。そのような仕事場で、我々宇宙飛行士は、同僚宇宙飛行士や各国の管制要員と息をぴったり合わせて確実に仕事をこなしていかなければなりません。それも、ただ自分の言いたいことを言うだけでなく、相手の言いたいことをうまく読み取らなければなりません。

 4か月半に及ぶ宇宙飛行で心の支えとなったのは、家族との会話であり、食べ慣れた日本食であり、また、つくばの管制局の皆さんとの日本語での会話そのものでした。これらは宇宙での生活の中で自分の核として再認識できたものであり、それらに触れることによって無条件に心が安らぐものでした。

 内平らかに外成る、と言いますが、家族の強い絆と心の故郷を持つことは仕事に打ち込むためにもとても大切だと感じました。これらは生まれもって与えられるだけのものではなく自らの弛(たゆ)まぬ努力で築きあげていけるものだと思います。(おわり)

参考3 若田さん「草の香り」地球実感…異例の記者会見はこちら

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今晩は☆今回の若田さんの宇宙ブログを読んで♪まず!(家族)の大事さが!凄く!伝わりました!それと!父親は!皆!(家族)の為に働くと言う事も!改めて!痛感しました!それと!宇宙飛行士の仕事は!自分の言いたい事を言えるのでは無く!相手の気持ちも!上手く読み取る事が必要だと言う事が解りました!そして!改めて!宇宙飛行士の仕事の難しさを感じさせられました!※今回の若田さんの宇宙ブログを読んで♪改めて♪地上の良さを感じさせられました♪

受信: 2009年09月14日22時36分
投稿者:MACK

そうですね。
人間を宇宙まで上げる巨大なエネルギーを安全に
扱うには、大勢の人達の協力が欠かせないですからね。
それに、あまりにも巨大すぎる宇宙に近づく程、
身近な存在が大切に思えてくるのかもしれないですね。

受信: 2009年09月16日 0時59分
投稿者:Tomoko Haney

人間の5つの感覚の中で嗅覚が一番記憶と結びついていると聞いたことがあります。若田さんにとってこのリンゴのにおいは特別な思いをずっと抱かせてくれそうですね。空港に降り立った瞬間、その国特有のにおいがする国があります。タイなら熱気とプルメリアのにおい。日本のにおいってありますか?宇宙とは比べものになりませんが、海外在住の人間にとって若田さんのこの記事は、うんうんうなづきながら読ませて頂きました。何年こっちにいても私の根っこも日本人。お味噌汁を食べるとほっとします。若田さんに習って(ずうずうしくも、、)家族との強い絆やいい友人たちとたくさん絆が持てるようになりたいです。これって大変ですね!

受信: 2009年09月17日 4時09分

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