【宝塚 担当記者座談会 2021(前編)】
読売新聞水曜夕刊ポップスタイル第3週の好評連載「タカラヅカ 新たなる100年へ」を担当する2人の記者が宝塚この1年を言いたい放題振り返ります。(注・ネタばれを含みます、東上公演中心、あくまで記者個人の感想です)
田上(以下、田)…今年4月から突然、宝塚担当に。鋭意勉強中のアラサー男性記者
小間井(以下、小)…宝塚版「黒執事」を夢見る3児の母
※最後に読者投票企画(プレゼント有)もあります!
★引き続き、コロナに翻弄されつつ光も見えた2021年★
田 エンヤラ エンヤラ どっこいせ~♪ 年末に「桜嵐記」の歌をつぶやくとしみじみとしたものがあります。僕にとっては宝塚との出会いの年となった2021年。新しい世界の扉が開けたような気持ちです。
小 Welcome! Welcome! Takarazuka!4月に(未練タラタラ)担当替えとなった山田記者は宝塚取材をきっかけにどっぷりとのめり込み、あれよあれよという間に立派なヅカファンになってくれました。
山 呼んだ? 楽しそうね……。
田 山田さん!! 僕が見てない分をカバーしてください!
山 いいの~?
山田(以下、山)…今春、4年にわたる宝塚担当に別れ
山 観劇はまだ続けているの! でも東京はチケットを入手するのが本当に大変……。 大劇場公演は何とか見られたけど、別箱はチケットが全く当たらなかったわ……。コロナ禍の影響が深刻だった雪組「CITY HUNTER/Fire Fever!」は、比較的チケットが入手しやすかったので、うれしさのあまりリピート観劇しました。担当になったころは「同じお芝居を何度も見るとか、意味がわからない…」と思っていたのに…。
小 リピート観劇、最高ですよね! 座る席によっても見え方が違いますし。1年を振り返ると、ゴールデンウィーク頃には再び、公演ができない時期もあって、夏の都内の新型コロナウイルス感染者数もすごい数で宝塚にとっては厳しい時期もありました。秋以降、感染者数は激減してまたチケット入手が難しくなってきて複雑な気持ちだけど、宝塚のためには安定して公演ができるのが一番。早く客席降りが復活してほしいわ。
田 僕は客席降りをまだ見たことがないので…、実際に見たら大興奮してしまいそうです。昨年から引き続きのコロナ禍ではありましたが、その中でも時代の移り変わりや社会の流れに負けない「芯の強い主役」というイメージが作品に一貫してあったように感じます。シャーロック・ホームズ、楠木正行、ロミオ、銀ちゃん、オクタヴィウスなど…。
小 主人公たちの揺らがない姿勢は不確実な時代において一筋の光のように感じられましたね。それでは作品賞から紹介します!
【作品賞】
・本公演部門 月組「桜嵐記」(田)(小)
宙組「アナスタシア」(山)
次点 月組「桜嵐記」(山)
雪組「CITY HUNTER」(田)
宙組「Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-」(小)
田 「桜嵐記」は最後の桜のシーンが今でも思い出されるようです。「芝居の月組」というのをまさに教えてもらいました。宝塚ってこんなに泣けるんだ、すごいなと思った作品です。珠城りょうさんの演技はもちろん、脚本・演出が素晴らしく、また舞台美術もとっても美しかったです。珠城さん退団のサヨナラショーも初めて見ました。最後、階段をひとりひとり降りて袴姿であいさつするんですね。同じ和物で星組「柳生忍法帖」を見たら、こちらはコミカルな部分もあり、礼真琴さんの歌とダンスに圧倒されました。
小 今回は選ぶのに迷いはなかったですね。作品力としてずば抜けていました。四條畷の戦いが始まる時に、楠木正行(珠城)がセンターから現れると桜吹雪が両脇からブワーと吹き上げる。宝塚史上に残る格好良すぎる名場面がまぶたに焼き付いています。役が少ないと宝塚ファン的にはがっかりしますが、役が多すぎると初心者ファンはついていけない。その絶妙なところを過不足なくついているところにも感心しました。
山 「トップスター珠城りょう」の花道がずっと心に残りそう。座付き演出家の上田久美子先生とは名コンビだったよね。正行のようなぼくとつで清々しい心持ちの青年の役、珠城さんにはぴったりで。ラストに銀橋で客席に向かい、「お別れを、皆様」と告げるシーンは泣かずにはいられなかったわ。
「アナスタシア」は、ロマンチックなラブストーリーとさすがブロードウェーミュージカルというべきドラマチックな楽曲の数々が素晴らしかった。これからも定番として再演していってほしいな。トップスターの真風涼帆さんの歌唱も安定していたし、当時のトップ娘役の星風まどかさんや芹香斗亜さん、桜木みなとさん、和希そらさん…とみんな歌声が魅力的。特に芹香さんが歌う「ネヴァ川の流れ」はすごかった~。クライマックスのアーニャ(星風)とグレブ(芹香)の対決場面、芹香さんの歌が終わった後、劇場全体がかたずをのんで静まりかえっている感じで、生観劇の醍醐味を感じました。ブルーレイも買って、繰り返し見ています!
田 「CITY HUNTER」は、まずこの少しお下品なネタもある作品に宝塚が挑戦する心意気がすごいと思いました。縣千さんの海坊主をはじめ、どのように演じられるか公演前から楽しみでしたが、宝塚らしさとシティーハンターらしさが共存していて、原作の雰囲気を壊さず、かつ宝塚作品としてものにしているあたりが懐の深い劇団だと思いました。トップ彩風咲奈さんの少し憂いを帯びたようなセクシーな目は、冴羽獠に通じる雰囲気があって、役柄が似合っていましたね。SHISHAMOの宮崎朝子さんが作曲した「WONDERLAND」もかっこよくて良い挿入歌でした。
小 今年はショー作品も豊作でした。中でも「デリシュー」は絢爛豪華でこれでもかというこってり感。ケーキの上に初舞台生が居並ぶ様は伝説的MGM映画「巨星ジーグフェルド」のケーキのシーンをほうふつとさせます。コロナ禍の時期にはこれくらい濃い作品の方がパワーをもらえます。お菓子がテーマだからといってパンフレットの演出家写真もパティシエ風だったのには笑いましたけど。それはさておき、野口幸作先生の作風みたいなものが確立したショーだったのでは。今後も期待しています!
・別箱部門 宙組「Hotel Svizra Houseホテルスヴィッツラハウス」(小)
宙組「プロミセス、プロミセス」(田)
次点 月組「ダル・レークの恋」(小)
花組「銀ちゃんの恋」(田)
小 「スヴィッツラ」、これも選ぶのに迷いはなかったですね。宝塚はこれまであまたの理想の男性像を産み出してきましたけど、ここに来てまた見たことがない男性像を産み出したなと思いました。夢がある女性を快くニューヨークに送り出す。スマホもメールもない時代よ。別れのキスは拒否されて、手紙もNGだと言われても「クリスマスカードなら?」と言える。成功して再会した時にプロポーズしてさくっと結婚してしまう。これほど究極的に余裕のある男性は現実はおろか、物語でも見たことがない。あとは、遥羽ららさん演じるアルマがニーナ(潤花)を抱きしめながら語る、「大丈夫、幕は必ず、上がる」というせりふはコロナ禍に聞くと胸に響くものがあったわ。2021年の「ベストせりふ賞」をあげたい。
田 へぇ~。2020年のベストせりふはなんだったんですか?
小 「お前は俺の体を知りすぎている」(「FLYING SAPA―フライング サパ―」)ですね。
田 …落差がすごいですね。「スヴィッツラ」は僕が初めて見た宝塚作品となりました。真風涼帆さんのスーツ姿がかっこよくて、竹馬にのっているじゃないかと思うくらいに足が長くてびっくりしました。あと、舞台に登場する出演者の多さ、息の合った演技にも圧倒されました。
僕の別箱賞は「プロミセス、プロミセス」。「銀ちゃんの恋」が1位だと思い込んでいましたが、年末に追い上げてきました。有馬記念で第3コーナーを回り、全員抜いて追い上げてきた感覚です。
小 わかるような、わからないような…
田 ポップで、実際にはなさそうな話ですがそれも含めて楽しかったです。和希そらさんの人事部長・シェルドレイクがダンディーでとてもかっこよかったです。個人的には瀬戸かずやさんっぽい雰囲気があるように感じる男役さんです。特筆すべきは留依蒔世さんの演技。ヒロインの兄カールと行きずりの女性マージの二役を熱演しました。
小 一緒に見た演劇担当の先輩は留依さんが二役を演じたことに気付いていなかった。それくらい演じ分けが見事だったということ。
田 あえて二役で「地獄に落ちろ」というせりふを使って大爆笑をさらっていた。マージ役は休演になった出演者の方の代役で大変だったと思いますが、そこに抜てきした原田諒先生のセンスもさすがだと思いました。
小 次点は「ダル・レークの恋」。伝説的なベッドシーンをかたずを飲んで見守りました。めくるめく変わる豪華衣装に浮世離れした人たち。興奮して急きょ、山田記者と緊急座談会を開いたのもいい思い出。フィナーレの若手のダンスシーンも良かったな。
田 僕の次点は「銀ちゃんの恋」です。スターだけどダメな男、銀ちゃん。水美舞斗さんが演じるととっても魅力的で、「しょうがないかな…」と許さざるをえない。つかこうへい作品を見るのも初めてで、作劇の面白さを堪能しました。飛龍つかささんのヤスもいぶし銀でした。
読者の皆様の中にも2021年、最も印象に残った作品、スターはいると思います。
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こちらの不具合によるものです。申し訳ありません。 ☆締め切りは3日午後11時までです。
プレゼントは、来年早々に紙面で紹介予定の文・中本千晶さん、絵・牧彩子さん、監修・川村宏さん「タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史」に「タカラヅカの解剖図鑑」をセットで8人に。発表は発送をもって代えさせていただきます。(エクスナレッジ様、ご提供ありがとうございます)