【宝塚 担当記者座談会 2021(後編)】
読売新聞水曜夕刊ポップスタイル第3週の好評連載「タカラヅカ 新たなる100年へ」を担当する2人の記者(プラス1人)がタカラヅカこの1年を言いたい放題振り返ります。(注・ネタばれを含みます、東上公演中心、あくまで記者個人の感想です)
今回は後編。「最優秀スター賞」「最優秀新進スター賞」の発表です!
※座談会の最後に、読者投票コーナー(プレゼント有)もあります!!!
【最優秀スター賞】
・男役
花組 柚香光(田) 雪組 和希そら(山) 月組 月城かなと(小)
次点 星組 礼真琴(田)(小) 星組 愛月ひかる(山)
田 柚香さんはオーラやお顔が美しく、ショー「Cool Beast!!」をきっかけに、私のひそかな初推しスターとなりました。
山 記者たる者、推しへの愛は胸にグッと秘めるものかと……。真正面から突破してきたわね。さすが、元ラガーマン!
田 自分にうそはつけないので…。さすが「ダンスの花組」のトップスターと言わんばかりのダンスで、鳥のような赤い服で踊るシーンは特に幻想的。ディズニーのアニメーションを見ているようでした。雑誌「宝塚GRAPH」の巻末シールに光さんがいないか確認しては手帳の裏に貼るのが最近のひそかな楽しみです。
山田 「光さん」(恥じらい…♡)って。確かに光ちゃんはカッコいいけど、男性から見てどういうところに美しさを感じるの?
田 両性具有というか、ミステリアスな美しさを感じます。カワイイ女優さんを見ているときの女性としての魅力というより、西洋美術を見ているときのような美しいオーラに打たれる感じでしょうか。
小 語るわねぇ。今度手帳見せてね。私は月組の月城かなとさん。「ダル・レークの恋」「川霧の橋」とリアル男性的な色気を出してくるのに参りました。「桜嵐記」での明るい末っ子役もよかったですね。桜嵐記はリピート観劇した作品でしたが、ヒロインに「水、どう?」と薦めるせりふで毎回、必ず笑いをとっていたのはすごい。職人的匠の技を感じました。
山 私は和希そらさん。「アナスタシア」で女役のリリーをチャーミングに、一転して「シャーロック・ホームズ―The Game Is Afoot!―」のレストレード警部は渋く。配信で見た「夢千鳥」では芸術家の崩れた色っぽさを体現していた。何でもできるし、すべてがうまい。男役としては小柄で、そこは大きなハンデのはずなのに、魅惑の低音ボイス、独特の色気など、この1年で男役「和希そら」の魅力を確立した感が。そして、宙組での実績を引っさげて雪組に組替え。年明けの「ODYSSEY(オデッセイ)―The Age of Discovery―」が楽しみすぎる。
田 礼真琴さんはダンスと歌! 男役総合力では個人的に1位です。どれもキレがあって、「柳生忍法帖」で圧倒的な技量を目の当たりにしました。歌のシーンが待ち遠しかったです。星組は大運動会でも1位でしたし、やはり体育会系のさわやかでマッチョな「キャプテン翼」の翼くんようなイメージで宝塚を牽引するトップスター。
小 「VERDAD(ヴェルダッド)!!」は琴ちゃんの魅力を詰め込んだショーコンサートだった。「出来無杉(できなさすぎ)まこと)」として歌を下手に歌う場面は、超絶うまい礼真琴だから成立していました。
山 愛ちゃん(愛月ひかる)。「ロミオとジュリエット」では、いつの間にかティボルトを目で追っていました。ポーズの決め方、衣装の着こなしなど、宝塚のエレガンスをこれでもかと味わわせてくれるザ・スターさん。専科から星組に異動した時にリモートインタビューをしたんだけど、「こっちゃんを全力で支える」「受け継いだものを下級生に伝える」と熱く話してました。後の別のインタビュー記事から、このときには退団を決意していたと知り、すごく切なくなったけど、タカラジェンヌの心意気や一世一代の覚悟を感じたな。「肩幅」の話をしたら、「やーん、下級生の頃はもっと華奢だったんですぅ」と胸の前で手をクロスして恥じらっていたのがかわいらしかった……。
小 ロミジュリで役替わりの「死」では、「愛ちゃんの死」がツイッターで話題に。先日の星組千秋楽のサヨナラショーを配信で見ましたが、名作「うたかたの恋」の一場面を再現するなど宝塚愛にあふれていた。今後の人生も幸あらんことを!
・娘役
月組 彩みちる(田) 宙組 潤花(山) 花組 華優希(小)
次点 星組 有沙瞳(田) 宙組 天彩峰里(山)(小)
田 「CITY HUNTER」で冴子役だった彩みちるさん! セクシーさに目をみはりました。ていうか、冴子しか見ていませんでした。
小&山 えぇっ! またぶっちゃけてきた。
田 でも直視できないから見過ぎていると思われないようにチラっと見ている風を装っていました。
小 さっきから聞いていると柚香さんの顔がきれいとか、彩みちるちゃんがセクシーとかただ「好き」ってだけで選んでない?
田 そんなことないです! 柚香さんも彩さんも役を完璧にものにしていました。僕の語彙力が足りないだけです!
山 演劇担当デスクもみちるちゃんの冴子にデレデレだったよね。私は潤花さん。雪組から宙組に組替えして真風さんの相手役となり、花開いた感じがします。屈託のない明るさがあって、舞台姿を見ていると自然とニコニコしちゃう。「シャーロック・ホームズ」のアイリーン・アドラーは悲しい過去を抱えてやさぐれた女性。声がつやっぽいので、こういう役もはまるんだなぁと。心の闇を歌う銀橋でのソロにはジーンとしちゃって。「Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-」では、男役の桜木みなとさんとキャットファイトして勝利したり、健康美にあふれたダルマ姿をバーンと披露してくれたり。このまま笑顔全開で突っ走ってほしい。
小 私は今年退団した華優希さん。年明けの「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」では、酒の密輸をするギャングの一味ビリー役をキュートに。「おめでとさん、おめでとさん」とやけくそにお玉で鍋をたたく姿が忘れられないです。
山 あれスゴかったよね!
田 このタイトルはどういう意味なのですか?
小 それがゲットできたらいいね。「それ」はつまり恋ってことよ。逆に劇中歌「スワンダフル」は「イッツワンダフル」のイットが省略されています。
田 なんと!おしゃれすぎますね。見たかった~。次点は有沙瞳さん。「ロミオとジュリエット」の乳母役が本当に素晴らしかった。Zoomではありますが、タカラジェンヌとして初めて取材させていただいたのも有沙さん。ガチガチに緊張していたのですが、有沙さんがとっても優しく明るい方で! 最初の取材が有沙さんで本当によかった。その後、芝居・ショーでも「歌がいいな」と思ってパッと見ると有沙さん、ということが何度もありました。
山 田上記者がガチガチに緊張しながらパソコンに話しかけてる姿をこっそり観察したかったわ……。私の次点は天彩峰里ちゃん。「アナスタシア」の清らかな少女から、「夢千鳥」他万喜の情念渦巻くファム・ファタルまで変幻自在! 歌声も素晴らしい。「シャーロック・ホームズ」のメアリーも、アイリーンを励ます場面など温かく演じていて印象深かったです。
小 「プロミセス、プロミセス」のヒロインもよかったです。会社の重役と不倫しているフランはタカラジェンヌとしては難しい役よね。キュートに切ない女性に仕上げてみせたところがすごい。
【最優秀新進スター賞】
・男役
雪組 縣千(田) 雪組 華世京(山) 月組 礼華はる(小)
次点 雪組 華世京(田) 宙組 亜音有星(山) 月組 涼宮蘭奈(小)
田 ダンス、演技と様々なところで存在感があった縣さん。初めて見たのは「ほんものの魔法使」のモプシー。犬役をコミカルに演じていました。「CITY HUNTER」では海坊主役。コミカルな役どころも多いですが、新人公演では冴羽獠をスタイリッシュに演じていました。お名前も覚えやすくて、声に出して言いたくなる響きです。
山 セン・アガタは本当に視線をもっていくよね。私は「ほんものの魔法使」で臆病なマジシャン・ニニアンに抜てきされた華世京さん。「御曹司爆誕」の歴史的瞬間を目撃した感がありました。大役を落ち着いて演じていたし、「Fire Fever!」の「Arabesque Rockette(79の炎)」の場面、センターで踊る姿は既に貫禄たっぷり。見せ方を心得ている感じで頼もしいよね。
田 研2の男役さんながらニニアンという重要な役を丁寧に演じていました。少し歌うだけでもうまさが分かって、今後の活躍が楽しみです。
小 2021年の発見は礼華はるさんでした。ここも迷いなかったです。とにかく「桜嵐記」新人公演の出来が素晴らしかった。1m78の長身は男役として大きな武器。実直な中に色気もあって、確かな歌声。ふるきよき感じと現代っ子ぽさを併せ持ち、なんだか新しい男役像を見せてくれそうで期待しています。
山 確かに、礼華さんには山口百恵さん的な昭和の大器感を感じる。私は亜音有星さん。スポットライトが当たっていなくてもなぜか目立つ舞台姿はタカラジェンヌとして大きな武器。宙組らしい長身イケメンだし、スクスクと成長してほしいな。
小 博多座の「Dream Chaser―新たな夢へ―」のロケットでセンターで踊っている場面が印象的だった涼宮蘭奈さん。抜群のスタイルでキレッキレに踊っていました。「あの子誰?」ってすぐにパンフレットでチェックしましたよ。
・娘役
花組 星空美咲(田) 月組 きよら羽龍(山) 宙組 山吹ひばり(小)
次点 星組 澄華あまね(田) 雪組 華純沙那(小)
田 「銀ちゃんの恋」で元女優の小夏を演じた星空美咲さん。一途に銀ちゃんを思う切なさが伝わってきました。
山 きよら羽龍さんは、「Anna Karenina(アンナ・カレーニナ)」のキティ役を演じたときから、かれんさと舞台技術の素晴らしさを感じてました。「ダル・レークの恋」や、「桜嵐記」の新人公演ヒロインなど、歌もダンスも芝居もどんどん磨きがかかっている印象。
小 とにかくかわいい山吹ひばりさん。「シャーロック・ホームズ」で新人公演での亜音有星さんとの並びは眼福の一言。配信で見た「バロンの末裔」で、投げられた壺をキャッチする姿に度胸を感じました。
田 「柳生忍法帖」の新人公演で千姫を演じていた澄華あまねさん。ドスのきいた低い声に迫力があり、会津七本槍と相対するシーンがとても印象的。出てくるたびに熱量ある芝居を堪能しました。
山 澄華さん、退団は残念だったけど、配信で見た笑顔が晴れやかだったねぇ。
小 とにかくかわいいPART2、華純沙那さん。「CITY HUNTER」の新人公演でアルマ王女を演じていて「発見」しました。
【トピック】
田 「歌がすごい!」とある方をベタぼめしたことがあるのですが、それ以降もどんどん歌がすごい人が出てきて「ドラゴンボール」「ONE PIECE」のように、話が進むにつれてどんどん強い人が出てきて、「どうなっているんだ!?」と。自分の判断基準のもろさに気付かされました。
小 それがトピック? もっと肝心なことがあるでしょう。望海風斗さんや珠城りょうさんの両トップの退団、そして「トップ・オブ・トップ」として君臨してきた轟悠さんの退団には一つの時代が終わった感がありました。配信がどんどん進化し、バウホール公演の配信が決まったり、新人公演の配信もスタートしました。
山 人気が集中する貴重な公演が見られる配信は本当にありがたいわ。瀬戸かずやさん、愛月ひかるさんと2番手退団が続いたのも今年の特色といえるかもしれません。そして、95期の男役スター7人が全員、東上公演を経験することに。一つの期でこれだけ多くのスターが東上することって、なかなかないよね?
小 新人公演、全国ツアーが再開したのも明るいニュースだった。
田 見ているとすぐ感想を話したくなります。早く、コロナが落ち着いて幕あいに語れる日が来るといいですね。理事長が小川友次さんから木場健之さんに。方針として変わったところはあるのでしょか。
山 演目はかなり前から決めるそうなので、木場体制の影響かは分からないけど、今年は「CITY HUNTER」「柳生忍法帖」、そして先日発表されたLDHとのコラボレーション企画と、これまでになかったような分野に題材を求めていた気がします。コロナ禍だからこそ、新たな挑戦をして宝塚歌劇の裾野を広げていこうという趣旨なのかな。ただ、それが成功しているかというと、個人的には「お、おう…」という感じ。宝塚では「ラブ」が見たいんだけど、恋愛にまつわるダイナミックな心の動きや、濃厚なドラマがきちんと描かれたお芝居が少なかったかなぁ。たくさんいる生徒にそれぞれ見せ場を、という宝塚ならではの事情や制約があるのはわかるんだけど、キャラを並べただけの印象に終わってしまうのはもったいない……。
小 演じているタカラジェンヌたちは頑張っているから出来るだけ作品のいいところを見つけようとするんだけど、それにも限界を感じた脚本がいくつかあったのは確かよ。演出家の育成については喫緊の課題。何とかしてもらいたいです。いいなと思う若手の方もいまして、「夢千鳥」の栗田優香さん、2019年の作品ですが「龍の宮(たつのみや)物語」の指田珠子さんには期待しています。来年の指田さん作・演出の永久輝せあさん主演「冬霞(ふゆがすみ)の巴里」が楽しみすぎます。ひとこ(永久輝さん)×復讐劇って! 鬼に金棒な感じ。
田 僕の喫緊の課題としては座高の高さです。座高が1m50くらいあるのです。後ろの方が見やすいように少しだらっと座るとか座高を低くする方法を小間井先輩に教えてもらって研究しています。
山 エラいじゃない! 背中は背もたれにぴったり付けるようにしてね。来年もすてきな作品との出会いを楽しみにしています!
読者の皆様の中にも2021年、最も印象に残った作品、スターはいると思います。
そこで、アンケート「あなたが選ぶ 宝塚歌劇団 2021年最優秀作品」「あなたが選ぶ 宝塚歌劇団 2021年最優秀スター」を行います。
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※※上記のサイトでは【紙面に掲載の「キーワード」と必要事項を記入のうえ】とありますが、【キーワードは不要】です!!!
こちらの不具合によるものです。申し訳ありません。 締め切りは3日午後11時までです。
プレゼントは、今後紙面で紹介する予定の文・中本千晶さん、絵・牧彩子さん、監修・川村宏さん「タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史」に「タカラヅカの解剖図鑑」をセットで5人に。発表は発送をもって代えさせていただきます。(エクスナレッジ様、ご提供ありがとうございます)