とんちゃんこと、東啓介さんポップスタイル“凱旋”記念のブログ第3弾は、昨年11月28日(土)に開催されたソロコンサート「A NEW ME」のレポートをお届けしましょう。「ウチカレ」を見て東さんを知ったという方ほど読んでいただきたいです。
なにせ、コンサートでも、「タイトルは、僕の新たな誕生という意味。僕のことを知って間もないよっていう方は全然大丈夫です。僕のミュージカル人生の過去・現在・未来をこのコンサートを通じて皆さんと共に旅をして僕のことをより知っていただけたらなと思っています」と語っていたのですから。
コンサートは「マイ・フェア・レディー」の「君住む街角」で軽快にスタート。
コロナ禍の影響で、会場の収容率は50%。さらに一人ひとりはマスク着用のみならず、フェイスシールドも配られました。最初のMCでは、「50%といえど、僕から見てる景色は本当に最高ですよ!」、途中でも「フェイスシールドを付けてるから暗くても反射でうなずいているのが分かる」と、コロナの異常事態でも観客の心を和らげる東さんの優しさが溢れていました。
ステージセットは、クラシカルな大きな時計が目を引きます。
「最初は時を過去に戻しましょう」、東さんが言うと、背面の時計がぐるっと巻き戻りました。ここから、東さんが過去からの道のりを語ってくれました。
16歳の頃にミュージカル「レ・ミゼラブル」を見て感動して以来、帝国劇場に目標を定めていたこと。第一歩として、ミュージカル「テニスの王子様」に出演し、2.5次元舞台で活躍したこと。そして、グランドミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」では、「分厚い台本と楽曲に向き合って毎日がいっぱいいっぱいだった」そうです。そんなとき、声をかけてくれたのが、石丸幹二さん。「『最初は僕もそうだった』と言ってくださり、勇気をいただき、憧れる存在になりました」。そして数々の経験を積んで2019年に「ダンス・オブ・ヴァンパイア」で帝国劇場に立つことができたのです。
そんな語りから、楽曲「ひとかけらの勇気」への入り方が格好良かった。前奏が流れる中、「『スカーレット・ピンパーネル』で石丸さんが演じたパーシーはこう言います。『僕は諦めない。ひとかけらの勇気がある』」。そう言って歌い出したのです。堂々とたくましく包容力がある歌声! 中間のQ&Aコーナーで「演じたい役はパーシー」と真っ先に断言していただけに、相当歌い込んでいたのでしょう。実に様になっていました。
続けて夢の舞台、帝劇公演「ダンス・オブ・ヴァンパイア」の「サラへ」。激情をあらわにする太い声は、大筒のような迫力でした。
次は「時を未来に進めましょう」と、指をパチン! 時計が先に進むと、「夢や目標とする作品を届けたい。僕がおじいちゃんになるまで一緒についてきてくれればうれしいです」と将来の抱負を語りました。
ここで披露したのは、「モーツアルト!」から「僕こそミュージック」。
「ヴォルフガングのはかない人生、人間味があって魅力的。そんな役をやってみたい」と、役にほれ込んでいるようで、言葉数の多い序盤のセリフ風の部分を表現豊かに歌い演じていました。そしてBメロからサビの伸びやかさ。裏声もバッチリでした。
続いて、「ムーラン・ルージュ」から「ユア・ソング」、「ディア・エバン・ハンセン」から「For Forever」と英語詞の歌にも挑みました。「ディア・エバン・ハンセン」は、一昨年、初めてNYへ行った時に見たそうです。2人舞台「カラー・オブ・ライフ」がNYで初演され、舞台もNYだったため、現地を訪れて勉強したんですよね。
昨年、公演が予定されていた「ジャージー・ボーイズ」から、「マイ・アイズ」を披露してくれたのもうれしかったです。高音で軽やかに歌い上げていました。「ボブ・ゴーディオという役を、コンサートではありますが演じることができて良かったです」と、前向きに語ってくれました。ボブ・ゴーディオはソングライターでもあり温厚な役柄。配役の発表があった時、東さんならピッタリと思っただけに、演劇公演もぜひ復活してほしいものです。
ジャージー・ボーイズのパートでは、昼の部に尾上右近さんがゲスト出演されていたそうですね。うらやましい!でも、夜の部だけ披露された「カラー・オブ・ライフ」から「幸せ」も素晴らしかった。この曲だけ、スタンドマイクに替えて歌い、しっかりシフトチェンジしていたのです。ふんわりと柔らかい歌声。そばにいる人に優しく語りかけるような歌唱は、小さい小屋の2人芝居で培ったパフォーマンスです。1か月公演で、一番歌い込んでいるであろうだけに、この日もっとも心にしみました。
感動の余韻の中、お客さんから事前にもらった質問に答えるコーナー。ミュージカル関係の質問が主な中、なぜか2問目に「好きなおでんの具は?」。「卵ですね。でも、鍋派かな。キムチ鍋とか」と、あまり広がらない質問をあえて選んだ東さんに、渉先生っぽいところを感じてしまいました(失礼!)
そういうところも東さんの魅力のうち。次は、努力家で多彩な面を披露してくれました。まだ、始めて1か月半というギター弾き語りを披露してくれたのです。阿部真央さんの「嘘つき」。最初は優しくアルペジオで、サビはギターかき鳴らし、さらにボディをたたくことも。1番はバンドなし、独力で聞かせていたのですからたいしたものです。「以前は、ピアノで弾き語り。せっかく皆さん来てくれるならギター頑張っちゃうぞと思いました」と、歌い終わって語った東さん。初めて聞いたファンへの最高のプレゼントでしたね。
そして、最後のパート、現在を現す2曲。まずは、「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」の「独白」。この舞台は昨年3月の予定でまさにコロナ禍に翻弄された公演でした。数日間でも上演できたことが救いでしたが、主演の三浦春馬さんを思うと、つらい思い出がよみがえったことでしょう。それでも東さんはコンサートというハレの舞台を暗くすることはしません。「春馬君は、ご飯やジムに連れていってくれ、何度も助けられました。ジャージー・ボーイズ・コンサートの初日に悲しいことが起こりました。春馬くんのような存在になっていきたいという覚悟ができました。春馬君を尊敬している。春馬君のような優しい、愛されるような人材になりたい」と決意を語ってくれました。
その「独白」は、感情を吐き捨てるように歌い上げた後の、一転しての優しく包むような歌唱、感情の起伏の変化が見事でした。
さらにもう1曲は、「マタ・ハリ」の「普通の人生」。「初めてもらった大きな役で、壁にぶつかって、歌いこなせず。後半では少し華開いたかなと思ったけれど、正直僕の中では納得のいく出来ではなかった。その成長を見てほしかった」。過去の作品ですが、現在のパートとして据えた気概を明かしてくれました。
アンコールには、「ジキル&ハイド」から。「時が来た!」とキレがある歌声が見事。そしてやはりメリハリ、緩急をつけたニュアンスにたけていました。デビュー以来、2.5次元や帝劇のような大劇場、2人舞台という小さな空間と、様々な場での経験を積み、大きな演技から細かなニュアンスまで身につけた東さんの総合的な成長が見て取れるコンサートでした。現在は、連ドラレギュラーという新たな舞台で活躍。その経験もまた舞台や歌へのフィードバックしてくれるのでしょう。更なる躍進が楽しみでなりません。
写真:岩村美佳