読売新聞水曜夕刊の新感覚カルチャー面popstyle(ポップスタイル)。今週は、シンガー・ソングライターの吉澤嘉代子さんの大特集。4枚目のフルアルバム「女優姉妹」(クラウン)の発売に合わせての登場です。収録されるシングル曲「残ってる」がロングヒットを続けており、まさに彼女のキャリア最注目の時期にご登場いただきます。執筆担当記者は、彼女が2014年に「変身少女」でデビューした時にインタビューをさせてもらっていて、いつか大きく特集をする日を待ち望んでいました。同時期に原宿で行われたショーケースライブも見て以来、どのバンド、アーティストよりもダントツで彼女のライブを見ております。そんな個人的な思いを込めながらも、吉澤さんのことをあまり知らなかった人にも魅力が伝わるように特集を組みました。多くの人に読んでいただけたらうれしいです。
記者はアルバムインタビューこそデビュー盤しかしていないのですが、ミニアルバム、フルアルバム問わず発売のたびにレビューをしていて、結構な確率で一推し盤としてもピックアップしております。デビュー年の2014年、1年を振り返る「回顧」という企画では、「記者が選ぶ今年のベスト盤」として、KIRINJI「11」、くるり「THE PIER」と紹介するのに続いて、舌を巻く発想力の持ち主として新人としての吉澤さんを評価していました。翌2015年には戦後70年企画の連載の一つ「シンガー・ソングライター」として、昭和世代の井上陽水さんとともに、平成生まれの代表として吉澤嘉代子さんのインタビューを掲載しました。記者の執筆ではありませんが、昨年「レジェンド」という企画で雪村いづみさんを特集した時は、雪村さんを尊敬する一人として吉澤さんを推薦して、インタビューが載ることになりました。
それぐらい、デビュー時から吉澤さんの才能にはほれ込んでいたのですが、なかなか評価が世間に浸透しないことに苛立ちも無力さも感じていたのが正直なところです。そんな中、今年ようやく来ました。「関ジャム」「SONGS」と、彼女を正当に認めてくれる影響力のある番組が出てきてくれましたね。こちらも満を持して、吉澤さんの大特集を掲載できることになりました。popstyleというページは見開き2Pの大きな特集なのですが、吉澤さんは魅力があまりに多彩で、語る言葉も豊富なので、大特集でも紙面の狭さを感じてしまいました。特に、今回ありがたいことに、松本隆さん、吉岡里帆さんのお二人が心のこもったコメントや原稿を寄せてくださったこともあり、予定していたメニューは紙面をあふれてしまいました。そこで、このブログで載せきれなかったお話を少しだけ紹介しましょう。
本日発売の4枚目のアルバム「女優姉妹」を作るにあたり、影響を受けた作品などのお話について。
★映画「少女邂逅」(枝優花監督)ⓒ2018「少女邂逅」製作委員会
「『残ってる』のミュージックビデオに出演してもらったモトーラ世理奈ちゃんが出ているので見に行ったんですけど、女子校のいじめや友愛がテーマだったので、すごく影響を受けました。たまたまそういう曲を作りたいと思っていた時だったので、『女優姉妹』の1曲目の『鏡』などは、情景のようなものが反映されていると思います」(吉澤さん)
今回のアルバムは、少し妖しい歌詞とサウンドが相まって、1曲目からスクリーンの中にいざなわれるかのような感覚を覚えますよね。
<制服の影がまどろみの室(へや)で みつあみを解きあう>
という歌詞にはドキッとしてしまいました。男性には分からない感覚ですよね。女子同士というのは距離感が近いのですか?と尋ねると、吉澤さんは「近いですね。女の子の同士はまだ自我が形作られていない時、どこからが自分なのか分からなくなったりする時期がありますね。だから束縛したり嫉妬したりとかもすごくあるし。女の子同士だと『◎◎ちゃんと話してたんじゃん』みたいな。子供の頃はそういうのが苦手だったんですけど、今は憧れもあるかもしれないですね」と答えてくれました。この映画もそういう女の子同士ならではの世界が描かれてそうで興味深いです。現在、東京は下北沢のトリウッドなどで公開中とのことなので見に行ってみたいと思います。1月には、ブルーレイ&DVDがポニーキャニオンより発売予定だそうです。
★小説「ののはな通信」(三浦しをん著、KADOKAWA)
「『のの』と『はな』という女の子同士の手紙のやりとりが続く書簡体小説。やっぱり今回のアルバムを作るにあたり、色々調べました。『百合のリアル』という本を買ったりとか」(吉澤さん)
この本については、弊紙の今年6月の文芸記事でも取り上げられていて、高く評価されていました。「ただただ驚かされた。書簡形式で書き切った胆力にも、冒頭では予想だにしなかった場所へ読者を連れて行く筆力にも」と絶賛です。「のの」と「はな」は恋人同士で4章構成の1章で、愛の告白と1年も満たずに訪れた別れが描かれ、大学時代を第2章で、40代になって約20年ぶりにメールで再会して空白を埋めていく日々を3、4章でつづっていく物語です。
吉澤さんの描く歌の世界は、映画や小説のような深みがあり、詞の行間を聞き手に自由に想像させてくれますよね。歌詞だけでなく、サウンドや歌い方も相まって空気や色彩感を伝えてくれるのですが、やはりそれには日頃の様々なインプットも欠かせないのだろうなと思います。
★そのほかのメニューです。
・毎月第1週は、「民ゾクッ学」です。今回は広島・尾道の千光寺の不思議な話を紹介します。実は、尾道に行った目的はポルノグラフィティの地元凱旋ライブのためだったのですが、残念ながら取材日の2日目は雨で中止。せっかく尾道に行ったからと取材目的を切り替えたのです。その日の尾道は千光寺も名物のラーメン屋さんもポルノファンでいっぱいでした。でも、とても面白い話を知ることができました。ポルノのお二人の地元愛を別の形でお伝えできれば!
・辛酸なめ子さんのじわじわ時事ワードは「炎上供養」。ネットで炎上してしまった案件を供養してくれるという新潟のお寺の話です。
・注目では、吉澤さんにちなんで作詞本を紹介。→Pia-no-jaC←の日比谷野音ライブのレポートも。
<プレゼント>
・吉澤嘉代子さんのサイン色紙を読者3人にプレゼントします。応募には紙面掲載のキーワードが必要です。応募はこちら 、または、https://qooker.jp/Q/ja/popstyle/taikai/ をクリックしてください。11月11日(日)午後11時締め切りです(お、ぞろ目で覚えやすい!)。
★ポップスタイルが掲載されているのは、読売新聞夕刊です。一部地域では夕刊自体発行していませんのでご注意ください。
お買い求めは、読売新聞の販売店や駅売店で(コンビニでは置いていないところが多いです)。夕刊は1部50円。