5月21日付の読売新聞夕刊「ALL ABOUT 柴田ヨクサル」を読んだ皆さんは「なぜ、対局室にメード姿の女性が?」と思ったかもしれませんね! その背後には米長邦雄会長の英断があったのです……。超話題の連載、西条記者の観戦記、第2弾行ってみましょう!
上手 竜王 渡辺 明 (飛車落ち)
下手 柴田ヨクサル
平成20年4月24日 於・将棋会館「香雲」の間
第1図以下の指し手
△6二銀▲4八飛△5四歩▲3八金△5三銀▲4九玉△3三角▲3九玉△1四歩▲1六歩△7二金▲2八玉△4一玉▲6六歩△3一玉▲6八銀△2二玉▲6七銀△6四歩▲5八金△6三金▲4七金左△7四歩▲7八飛△8四歩▲7五歩△同 歩▲同 飛△7四歩▲7八飛△5五歩▲7六銀△5四銀直▲7五歩△4二角▲7四歩△同 金(第2図)
★ハチワン流陽動振り飛車
対局場はプロの対局でも使われる将棋会館5階「香雲」の間。本来は記録係が占める席に座っているのは、メード姿の女性。階下では、棋士の名誉と生活をかけたプロ同士の苦闘が繰り広げられているだけに、「なぜ、メードがいるのか」という疑問を抱きながら香雲前の廊下を行き交う日本将棋連盟関係者。「竜王とハチワンの作者の指導対局だよ」と聞くと皆納得した。
それにしても、将棋の総本山にメードとは将棋界も柔軟になったものだ。竜王戦を担当する筆者が連盟事務局にメード姿の女性の観戦が可能か打診したところ、当然のごとく、渋い顔をされた。とはいえ、ハチワンダイバーといえば、女性真剣師である「アキバの受け師」中静そよのメード姿である。新聞に掲載する写真としては、観戦するメイドの存在は必要不可欠といえる。
そこで連盟理事会のトップ、米長邦雄会長に直訴したところ、「なにメードだと! 私が対局の立会人(審判)をしようではないか。若者への将棋の普及のために特例として認めましょう」とありがたい言葉。
対局当日、連盟の公務で同席できないのを残念がっていた米長会長は、「これからの将棋界はオープンでなければいけません」と話す。現役時代はタイトル戦の打ち上げの後、飲み過ぎてしまい、関係者の前でパンツを脱いだこともある名棋士の言葉だけに重み(?)がある。
本譜に戻る。ヨクサル氏は▲4八飛と右四間飛車に構えた後、玉をするすると2八に囲う独自の指し方。この指し方なら難なく「銀冠」の堅陣に囲うことができる。
本譜のようにいったん▲4八飛と一旦停車してから▲7八飛と回るため専門的には1手損にはなるが、この手損が大きく響かないと見た感覚はなかなかのもの。ヨクサル氏が作戦勝ちの気配である。
私たち将棋記者が所属する記者クラブ「東京将棋記者会」は、その年度で最も斬新な戦法を開発したプロ棋士に「升田幸三賞」という権威のある賞を贈っているが、選考委員を務める筆者としては「ハチワン流陽動振り飛車」を来年度の候補戦法に推薦できるか検討したい(あくまでも検討ですけど…)。
▲7五歩からヨクサル氏が1歩交換に成功した局面。「すでにこちらが苦しい」と渡辺竜王。
左銀を7六まで進めて▲7五歩と合わせた。第2図を迎え、竜王の7筋は崩壊寸前。ヨクサル氏が大きなチャンスを迎えた。(西条耕一)
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