あすは白樺派じゃなく切株派集会?! 真摯なショック・バリューを見届けよう

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 洋泉社から別冊映画秘宝のムック『ショック!残酷!切株映画の世界』(高橋 ヨシキ、DEVILPRESS MURDER TEAM編、1365円)が出ました。
「切株映画」とは聞き慣れない言葉ですが、雑誌「映画秘宝」デザイナー/ライターの高橋ヨシキさん(映画「キル・ビル」のポスターデザインを東映テイストたっぷりに「ビルを殺れ!」としてプライベートで作り、タランティーノ監督本人から大絶賛を受けた猛者です)が、ある夜ダジャラー/三島賞作家の中原昌也さんと飲み交わしているうちに「白樺派」になぞらえて?!「切株派」なる概念が生まれたそう。あす24日、刊行記念イベントも行われます。

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切株派の理念をかんたんに解説すると、「つくりものの残酷表現・人体破壊」描写が含まれる映画を世間的道徳的な「よい」「悪い」の区別なく等価に扱い、愛でることです。激しく人体が破壊される「切株」描写は低俗、俗悪、と指弾されることも多いのですが毒にも薬にもならないモノよりは遥かにショック・ヴァリュー(怒りや恐れ、嫌気など否定的な感情を引き起こす表現が持つ価値。90年代ベネトン広告のように、あえて社会にショックを与えて注意を喚起する)があるとして評価するのです。

この概念でもって観ると「プライベート・ライアン」も「13金」も「ひぐらしのなく頃に」もアンディ・ウォーホルもサム・ペキンパーも谷岡ヤスジも「ロード・オブ・ザ・リング」も「モンティ・パイソン」も「子連れ狼」も「パッション」も「キル・ビル」もヒッチコックも「父親たちの星条旗」も、みんな人間の負の側面にも眼を背けず真摯に取り組む切株派映画なのです。

ポップスタイルに昨年1年間コラム「奇妙行為展覧会」を連載して頂いた柳下毅一郎さんも、デヴィッド・クローネンバーグ監督/J・G・バラード原作の『クラッシュ』メイキングについて書いた記事と、『哀しみのトリスターナ』について書いた記事の2本を寄稿しておいでです。また、ダリオ・アルジェントやイーライ・ロスのインタビュー、切株派映画入門ガイドから切株から観る世界映画史など盛りだくさん。「小さい版型だったころの映画秘宝」テイストにも満ちあふれ、映画初心者からマニアまで満足させる力作です。ぜひ怖がらずに…とはいいません、怖いものみたさで手に取ってみて下さい!

新宿ロフトプラスワンにてあす24日(日)の夜7時半から刊行記念で行われる切株派決起集会では、アメリカンホラーや女囚映画に詳しいホストの高橋ヨシキさんほか、ジャーロ(イタリアの推理サスペンスもの)の専門家・山崎圭司さんなどが出演するまさにホラー業界の超党派大集合イベント! 飲み食いしながら観られます。こちらも楽しみ…私も覗きにいきます!

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