宇多丸×掟対談【第1章 出会い】

第1章 出会い

 掟ポルシェ 2004年の12月に当時のPerfumeのマネジャーさんから、ちょっと面白いことがやりたいと提案があって。面白ければ何でもアリって感じの方だったんです。自分も参加している「申し訳ないと」というJポップ限定のDJイベントがあって、そこに興味を持ったそうで、実際にイベントに参加させていただく形で始まりました。Photo_2

自分は物心ついたときからアイドル好きで、アイドルのCDは満遍なくチェックしていたので、Perfumeの存在は知ってたんですよ。身の周りに、いわゆる「モーヲタ」が結構いて、「モーニング娘。」がつまんなくなりかけてきた2003~4年ぐらいに、いろんなところに流れていったわけですね。その中で、秋葉原でのイベントを中心に、定期的に活動してたPerfumeのファンになったって人が意外といた。Perfumeが一貫してやってきたテクノポップは、モーニング娘。をはじめとするハロプロの音楽とも融和性が高く、流れやすかったんでしょう。

 そういう人たちが、握手会のたびに何度も握手するためにCDをいっぱい買うんです。彼らの一人が「Perfumeいいよ!」と布教のために配り歩いていたCDを1枚をもらって、それが「モノクロームエフェクト」(全国インディーズ2nd、04年3月発売)だったんです。だけど、もらってすぐには聴かなくて。ちょうどその頃、「笑っていいとも!」の前の時間帯ぐらいのいい時間にスポットCMを流していたんです。それを見ても、それほど興味を引かれなかったというのもあって。

 その後しばらくして、たまたまレンタルビデオ屋にエロビデオを借りに行ったら、有線ですごくいい曲が流れてくるんですよ。アイドルポップスなんだけどテクノっぽくて、それでいて今までちょっと聴いたことがないような、いわゆるベタベタなアイドル感ではない部分で勝負してる曲。ちょっと変わった歌だなと思って、エロビデオを借りるのを急遽取りやめて、サビの部分の歌詞を覚えて家に帰ってネットで検索したんですよ。そしたらそれが「ビタミンドロップ」(全
国インディーズ3rd、04年9月発売)だとわかって。で、家にあった「モノクロームエフェクト」のCDもあわてて開封して聴いてみた。それが最初ですね。「あ、あのときもらったCDか」って、家で検索してやっとわかったんです。その頃に丁度イベント出演のオファーがあった。縁のあるときは重なるもんですね。その後もCD発売記念イベントの司会だとかで、今まで何度となく一緒に仕事をさせてもらいました。

 宇多丸 連載(BUBKA連載のアイドル音楽批評コラム「宇多丸のマブ論」)で取り上げたのは「モノクロームエフェクト」のときが最初です。それより前、2003年の夏にフジテレビ主催の「GIRL POP FACTORY」っていう、アイドルもバンドみたいなのも含めて女の子グループばっかり出るお台場のライブイベントがあって、モーニング娘。とかも出るし、連載もやってる都合上、新しい人でいいのがいればなと思って、そのイベントを放送する深夜の番組を見ていたんです。そしたら、その中でPerfumeが「スウィートドーナッツ」(全国インディーズ1st、03年8月発売)を歌っていた。で、曲の出来がはっきりダントツだったので、このグループはいいなと思って、CDを買ってみた。するとカップリングで「ジェニーはご機嫌ななめ」のカ
バーやってたりとか、これは思った以上に作り手が分かってやってるんだな、と感心したんです。プラス、さっき掟さんがおっしゃったように、周りのアイドルファンからの「Perfumeいいですよ」みたいなプッシュもだんだん盛り上がってきて。それで、「ビタミンドロップ」ぐらいのときかな、その中の1人が「ライブがとにかく素晴らしいんで、宇多丸さん1回見てください。メンバーにはもうライムスターのCD渡してます」って(笑)。「何度も渡してるんで、向こうはわかってるはずです」みたいな感じでライブに連れてかれて、まんまとさらにファンになってしまった、みたいな流れ。完全に「Perfumeは間違いない!」ってなったのは、やっぱり「ビタミンドロップ」からですね。「ここまでブレないで、しかもどんどん良くなってるんだから、これは本物だ」って確信しました。