先週、今年7月15日から東京都現代美術館で開催される「ディズニー・アート展」の記者発表会に行ってきました。この展覧会のきっかけになったのは、千葉大学工学部で昨年、アニメ映画「眠れる森の美女」などのオリジナル画が約半世紀ぶりに発見されたことでした。「眠れる森の美女」が日本で公開された1960年から翌年にかけ、全国の百貨店や国立近代美術館で展示されたセル画やイメージボードが同大学に寄贈され、そのまま眠っていたのでした。
これを受け、米国のディズニー本社も、門外不出の所蔵コレクションを展示用としては初めて海外に貸し出し、合わせて約550点もの貴重な資料が一堂に会することになったのです。記者発表会でもその一部が展示されましたが、描いた人の息づかいが聞こえてくるような躍動感あふれるスケッチや、細部まで丁寧に描き込まれた美麗な背景画に目を見張りました。展覧会が、今から楽しみでなりません。
今回展示される資料の中には、80年近くも前のものまであるのですが、これだけ長い間保存されてきたことに驚かされます。アニメの制作に使うこうしたセル画や背景画などは、作品としてのフィルムが出来上がってしまえば無用の長物で、かつては美術品としての価値はあまり見いだされていませんでした。日本でも、昔は処分に困っていたと聞きますが、アニメブームが起こってからは、逆に制作会社にセル画を盗みに入るファンも現れたりしたそうです。
ところが、ここ数年でアニメ制作のデジタル化が急速に進み、以前はセル画と背景画を重ねて1コマ1コマカメラでフィルムに撮影していたのが、今ではほとんどの作業がコンピューター上で行われるようになりました。つまり、作品そのものはデータとして存在するだけで、制作過程を知るよすがとなる具体的な「モノ」が生じなくなりつつあるのです。
省力化や省資源化、修正の容易さなど、デジタル化の利点は山ほどありますが、果たして数十年後、現在放送されているアニメで今回のような展覧会が実現できるのだろうか――。そう考えると、一抹の寂しさも感じたりするのです。