Pop Styleブログ

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読売新聞水曜夕刊ポップスタイル第3週の好評連載「タカラヅカ 新たなる100年へ」を担当する二人の記者が宝塚この1年を言いたい放題振り返ります(注・ネタばれを含みます、東上公演中心、あくまで記者個人の感想です)。

 

恵美(以下、恵)…宝塚歴3年目に入り、愛が加速する40代♀

藍子(以下、藍)…お正月の宝塚遠征が待ち遠しい3児の母♀

★ダブル「さゆみ」ロスとダブル「Ray」の到来

 

藍 ♪俺~こ~そ~GOD OF STARS さあ行け地の果て~…ケーサラ、ケーサラ、ケーサラァ~~♪

恵 暗い表情で歌い続けてこわいんだけど。

藍 紅ゆずると明日海りお、2人の「さゆみ」の卒業がつらくていまだに立ち直れない…。

恵 確かに。100周年以降の宝塚を牽引してきた2人のトップスターが退団して、世代交代の波を感じた1年だったわね。

藍 明日海は退団公演前に劇団初の横浜アリーナでのコンサートを成功。まさかの100周年運動会の再現には驚いたけど、私の中でもやっと100周年にケリがついた気がしたわ。

恵 いや、もう105周年だよ、5年たってるわよ?

藍 それだけ10年ごとの運動会っていうのはタカラジェンヌにとって大きな出来事なのよ。

恵 えっ、本業は舞台だよね? コンサートは、演出家のあまりの「横浜推し」な選曲に驚いたけど、走りまくる明日海をはじめ、出演者たちの情熱が感じられたからALL,OKよ。

藍 恵美様的にも? 昨年の舞浜コンサートに続いて「U.S.A.」も再度見られてよかったわね。

恵 「U.S.A.」といえば、フジテレビ系音楽番組「FNSうたの夏まつり」で雪組選抜メンバーが踊ったのが忘れられないわ。タカラジェンヌの輝きはテレビ越しにも伝わってきたわ。

藍 NHKのBS8K、BS4Kでも宝塚中継は目玉の一つ。メディアの使い方にも注目していきたいわね。

恵 新聞も忘れないでくださいね!

藍 個人的には2002年入社なので、2002年入団の紅にはシンパシーを持って見守ってきました。明日海とは予科本科の関係ね。

恵 ちょっとずうずうしすぎるわよ? 

藍 最後の新人公演で主役をつかみ、スターダムを駆け上がったのはもはや伝説ね。明日海もそうだけど、紅のようなスターももうなかなか現れないのではないかと思う。

恵 2人とも飛び抜けた「宝塚愛」の持ち主だったわね。花組は柚香光、星組は礼真琴と「ダブルRay」の2人が跡を継ぎました。

藍 花の95期生ね! 娘役では既に3人トップスターが生まれている。この先も楽しみね。

恵 やっと元気が出て来たわね。

 

【作品賞】

  • ミュージカル部門(大劇場芝居)

雪組「ファントム」(恵)、星組「霧深きエルベのほとり」(藍)

次点 星組「霧深きエルベのほとり」(恵)、星組「GOD OF STARS―食聖―」(藍)

 

 

恵 星組にかたよってない?

藍 一応、断っておくと、星組ファンというわけではありません。でも、今年の星組は別箱も含め、クオリティーが高かったと思うな。

恵 確かに! 「鎌足」もタイトルがそのまんまでびっくりしたけど、面白かったわ。

藍 「ファントム」は屈指の歌うまコンビが期待にこたえてくれたわね。

恵 再演だけど、「だいきほ」なら素晴らしいに違いないと思っていたけど、期待以上だったわ。望海風斗のエリックは少年よりで、無邪気さと残酷さが際立って、それゆえに悲しく切なく感じられた。

藍 斬新な映像も新たに加わって、進化を感じたわね。恵美さん、目が赤いわよ。

恵 「私の夢が叶う場所」のデュエットで早々に泣き始めて、「私の真の愛」から「私を産んだ母」にかけて涙腺崩壊よ。真彩の「素顔を見せて さあ さあ」のところは歌声が体中にビリビリきた。

藍 天使の歌声にふさわしかったわね。

恵 もう同じキャストで見られないなんて…。宝塚のはかなさを思い知ったわ。「エルベ」は、初演が1963年の作品なんて古すぎないかなと思ったけど、人の心を打つ物語は時代を超越するのね。

藍 主人公のライバル役となりそうなフロリアンが怖いくらいいい人なのが面白かったわ。で、30年以上前の再演を映像で見たけど、今回は七海ひろきの役が新たに作られていたり、ダンス場面へのつなぎが絶妙だったり、演出家上田久美子の構成力はやはり天才的だと思ったわ。

恵 また、「顔で笑って心で泣いて」みたいな男性像が、「トップスター紅ゆずる」のあり方とも重なる気がして…。じーんときちゃった。

藍 次点は小柳奈穂子作・演出「食聖」。紅の退団公演ですが、コメディーで卒業というのも珍しいし、過去の宝塚作品をオマージュしているのにもうまさを感じた。ステージで群舞を見せながら、銀橋で、紅、天寿光希の冒険物語を見せるような舞台装置の使い方もすごいと思った。確かに崖が見えたし、風を感じたわよ。

恵 「オーシャンズ11」も真風涼帆、芹香斗亜のバディー感が強めで良かったし、再演作品の新たな魅力を感じた。オリジナルの新作が今一歩だった気がするわ。

藍 そうよね、1本ものの多さにも…。やはり宝塚の基本は芝居&ショーだと思うから。

恵 座付き演出家の奮起に期待したいわね。

 

 

  • レビュー部門(大劇場ショー)

星組「Éclair Brillant(エクレール ブリアン)」(恵)、雪組「Music Revolutin!」(藍)

次点 花組「シャルム!」(恵)、星組「Éclair Brillant(エクレール ブリアン)」(藍)

 

藍 今年は大劇場のショー自体少なかったのよ!

恵 そんななか、酒井澄夫作・演出の「Éclair Brillant」は「宝塚レビューはこういうのが見たいのよ!」と思わせてくれた。宝塚風にアレンジされた耳なじみのある名曲に粋なダンスと歌。衣装のデザインや色合いもすてきだったわ…。

藍 酒井先生って、1959年入団なの。今年で入団60周年なのよ。そのお年であれだけロマンティックな世界を作り出すのは本当にすごいことよね。フィナーレは紫とピンクで「ゆめかわいい」世界観。原宿の若者もビックリよ。

恵 星組子の総力をかけた「ボレロ」の群舞も圧巻だったわね。

藍 雪組「MR」はあっちを見てもスター、こっちを見てもスター、雪組の充実ぶりを感じさせたわ。後半の早口ソングにはよく口が回るものだと感心したわね。

恵 次点は花組「シャルム!」。私が宝塚を好きになったきっかけが、「Santé!!」の男役群舞だったの。それをほうふつとさせるような花男のスーツと黒燕尾の群舞が最高にすてきだったわ。明日海のタカラジェンヌとしての「白鳥の歌」ともいえる「CHE SARA(ケ・サラ)」。このまま時が止まればいいのに…と。

藍 歌い上げに男役人生の集大成を感じたわね。

 

 

  • 別箱部門 雪組「20世紀号に乗って」(恵)、花組「花より男子」(藍)

 

恵 悲劇専門なイメージがある「だいきほ」の「コメディー!ハッピーエンド!」というだけでかなり貴重な公演。彩風咲奈演じるおバカっぽいハンサム男も面白すぎた。

藍 最後の汽車のセットの使い方がぜいたくだったわね。私は花男による「花男(はなだん)」を。原作をリアルタイムで読んでいたので感慨深かったわ。

恵 ところで、柚香光演じる道明寺司が、マイケル・ジャクソン風に踊っていた場面があったのはなぜ…?

藍 ドラマで嵐の松本潤が道明寺をやっていたから「MJ」つながりってこと? 

恵 えーっ。バウホール「Anna Karenina(アンナ・カレーニナ)」「龍の宮物語」も見たかったな~。

藍 なかなか都内で働いているとバウまで行けないわよね。ちなみに今年は全国ツアーが星組、宙組、雪組とありましたが、どれも豊作でした。全ツ大好き。中でも星組「アルジェの男」の作劇の面白さに改めて気付かされた。フランス映画のような幕切れはわすれがたい。

恵 その後に作者の柴田侑宏先生の訃報があったのよね。

藍 音楽学校では柴田作品が教材になっているというし、タカラジェンヌなら誰もが柴田作品を通ってきた。大人っぽい心の機微を描いた作品が多く、10代の音楽学校生たちは柴田作品を通してプロの演劇人、すなわちタカラジェンヌになっていくのだと思っているわ。

恵 偉大な人だったわね…。雪組全ツは、見に行くはずの公演が台風直撃で中止になったの…。

藍 関東での公演は軒並み中止に。これほど大規模な中止となったのは東日本大震災以来だったわね。

 

【主演男役賞】

花組 明日海りお(恵)、星組 紅ゆずる(藍)

 

恵 宝塚歴3年の初心者にとっては、生の「男役・明日海りお」に間に合ってよかったという気持ち。「CASANOVA」は物語としてはそれほど印象に残らなかったけど、「この役は今の明日海さんにしかできないだろう」とも。プロローグの「人生には恋と冒険が必要だ」で、「それがこの俺の 人生哲学さ~」の振りがかっこいいと、連載で取材した飛龍つかささんと盛り上がったのも楽しい思い出。

藍 見た目はあれだけかわいらしいのに、大人っぽい愛憎劇が似合う不思議な魅力のスター。抜てきに次ぐ抜てきは精神的にも大変だったと思う。ゆっくり休んで、また芸能活動してくれるとうれしいなぁ。

 

【主演娘役賞】

雪組 真彩希帆(恵)、星組 綺咲愛里(藍)

 

恵 去年も真彩を選んだ気がするけど、「ファントム」「壬生義士伝/Music Revolution!」「20世紀号に乗って」、どれも良かった! 押し引き自在な感じがでてきて。銀橋で流し目からウインクを飛ばす男前なところもたまらない!

藍 あーちゃん(綺咲)を選んだのは退団したからっていうわけではなく、純粋に「鎌足」でおぉっと思ったから。かれんなかわいらしさの中に芯の強さを感じさせる演技。感動したわ。

恵 退団あいさつも「鎌足」からの引用だったわね。

 

 

【助演男役賞】

専科 華形ひかる(恵)、宙組 芹香斗亜(藍)

次点 月組 鳳月杏(恵)、雪組 朝美絢(藍)

 

恵 華形は星組公演を中心に元花男ならではの華やかさと格好良さ、貫禄ある芝居で舞台を引き締めていたわ。退団発表が寂しい…

藍 「鎌足」での蘇我入鹿役の迫力には驚いたわね。

恵 前半の存在感はすごかったよね。「食聖」のヤン役もよかったし、「Éclair Brillant」で、退団した如月蓮、麻央侑希と歌った場面もすてきだった。

藍 私は「オーシャンズ11」でダニー(真風涼帆)の相棒ラスティーを演じていた芹香を。オーシャンズ初演、再演、再々演すべてに出ている「皆勤」だからってわけじゃないけど、こなれ感がかっこよかった。「群盗」も「追憶のバルセロナ」も色気だだもれで素晴らしかったです。

恵 次点は鳳月杏。「CASANOVA」では女役として、夫への屈折した愛情を表現。月組に戻った「I AM FROM AUSTRIA」では主人公の父親役をダンディーに。ただ立っているだけでも絵になる。男役としての隙のなさにうなったわ。

藍 私は朝美絢。「壬生義士伝」での斎藤一は物語の鍵を握る重要な役。あの役を任され、きっちりと結果を出した。

恵 FNSでは「黒髪の人」として話題になったね!

 

【助演娘役賞】

月組 海乃美月(恵)、宙組 遙羽らら(藍)

次点 花組 城妃美怜(恵)

 

恵 「夢現無双」の吉野太夫など、悲しみをたたえた女の役がぴたりとはまる。と思いきや、「I AM FROM AUSTRIA」の敏腕経営者のママ役でも魅力全開。あと、映像で見た「Anna Karenina」のアンナ役もあまりにも素晴らしかったので。

藍 遙羽は「オーシャンズ11」でラスティーの恋人役をキュートに演じていたわ。宙組全ツ「追憶のバルセロナ」でもいい味出してたわ。美脚でスタイル抜群。ついつい目が行く娘役ね。

恵 次点は「花より男子」で牧野つくし役を生き生きと演じた城妃。星組の音波みのりもそうだけど、色白で筋肉質な娘役さんがバリバリと踊る姿が好きなの。

 

【新人賞】

花組 帆純まひろ(恵)、星組 朝水りょう(藍)

雪組 潤花(恵)、宙組 鷹翔千空(藍)

 

恵 去年の「蘭陵王」の逍遥君役が色っぽかったので注目していたら、今年はついに「CASANOVA」で新人公演主演。「A Fairy Tale―青い薔薇の精―」でも、柚香光演じるハーヴィーの部下役で出番が多く、目立っていた。キラキラな笑顔でショーやレビューでも存在感が出て来た。

藍 私は星組全ツ「アルジェの男」でボランジュ総督役に抜てきされた朝水りょう。この役って専科クラスの威厳が必要なんだけど、主役の礼真琴より下級生の朝水が違和感なく演じていたことに驚いた。

恵 潤は「Music Revolution!」のロケットセンターが華やかだった。ダイナミックなダンスでショースターとして開花しそう。「ハリウッド・ゴシップ」では、芯の強い女優志願のエステラ役を好演していた。

藍 鷹翔は、宙組「オーシャンズ11」の新人公演の主演があまりにも堂々としていてびっくり。「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」も見たかったなぁ。

 

【トピック】

恵 月組2番手の美弥るりかの退団はこたえたわ。

藍 「紅5」が残すところ天寿光希だけになってしまったね。大規模な組替え発表も久々のこと。

恵 年末に発表された星蘭ひとみの専科異動も気になる。映像を中心に活躍ってどういうことなんだろう?

藍 今年亡くなった八千草薫さんは映画専科にいたこともあったけど、そういうことなのかしら。

恵 八千草さんは生涯、「清く正しく美しく」のイメージを貫いた宝塚OGらしい女優さんだったね。

藍 テレビ朝日系ドラマ「やすらぎの郷」で「姫」って呼ばれていたのも納得だった。星組のお兄様的存在だった七海ひろきが退団。卒業後もジェンダーレスな雰囲気を貫いているのは珍しいね。

恵 声優などいろいろと活動の幅を広げているのはうれしい。今後も注目したい。

藍 来年は「アナスタシア」を梅田芸術劇場の外部公演の後に宙組が上演。こうしたパターンは珍しいわね。

恵 望海風斗がコンサートを開催するのが楽しみでならない。年末に発売されるCD「GIFT」ももちろんネット予約済みよ。コンサートは世界的ミュージカルスター、ラミン・カリムルーやミュージカル界のプリンス、こと井上芳雄がゲスト出演する回もあり。

藍 えぇー!、3パターン見なきゃいけないやつじゃないですか…。

恵 いや、そんなきまりないから。みんな行きたいからね。

藍 相当なチケット難が予想されるけど、近年、ライブビューイング(LV)が充実しているから何とかなるかな?

恵 わりとなんでもLVをやるようになったわよね。ライトなファンにはありがたいと思うわ。

藍 ファン層の広がりが、ひいては作品のクオリティーの高さにつながると信じたいわ。

恵 2020年も素晴らしい作品と出会えますように!

【プレゼント】

12月25日掲載のALL ABOUTに登場してくださった中島健太さんイラスト入りサイン色紙を3人にプレゼントします。応募には紙面掲載のキーワードが必要です。応募はこちら 、または、https://qooker.jp/Q/ja/popstyle/taikai/ をクリックしてください。1月5日(日)午後11時締め切りです。 

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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