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桐谷健太さんインタビューブログ特別版も4回目、いよいよ最終回です。今回は、役者に対する思い、そして役者として今年ナンバーワンヒットを当ててしまった気持ちを聞いています。紙面の方は、歌への思いが中心になったので、実はこのパートが最も蔵出し率は多いかもしれないですね。少し長くなりますが、一気にエンディングまでご堪能下さい。

――桐谷さんファンにはおなじみでしょうが、俳優を志す幼少時のきっかけと、高校時代のユニークなエピソードについて改めて聞いてみました。俳優になりたいと思ったのは、保育園の時に見た冒険映画「グーニーズ」であり、その後、高校生になって雑誌の表紙になることに憧れて取った行動が「MEN’S NON-NO」ならぬ「KEN’S NON-NO」を友人たちと作ったことだそうです。詳しく語ってもらいましょう。

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いやあ、「グーニーズ」は、ぶっちゃけ後付けで、ホンマはどの時にそれを思ったかっていうのは、もしかしたら、それよりもっと前かもしれない。ただ自分がすごく覚えているのはそれで、自分よりもちょと上ですけど、少年たちが出てることに、悔しいと思ったし、「目立っとんなあ」みたいな。しかも、ぼうけん・・・・・・冒険って少年のロマンの固まりじゃないですか。今の子たちは冒険という感覚、どういうイメージを持つのか分からないですけど。プラス、それが職業やっていうのも冷静に分かってた部分があって。なんか、ああ、やりたい、この四角の中に入りたいって。

ずっとその時からやりてくて。でもどうしていいかも分からず。大阪だったし。高校の時、目立ちたい願望があって、コンビニ行ったら雑誌が並んでるわけじゃないですか。そこで、「なんで俺が表紙やってへんねん」ってなるじゃないですか。でも、そんな話も来るはずもなく。「自分で作ったらええやん」って制作して。学校の廊下にそれをカラーコピーしたやつを張りまくって、「見たいヤツは3年7組桐谷のところまで来い!」みたいな。校長にもちゃんと言うて。「ちょっとはらしてください、3日間でいいです」「いいよ」みたいな。それでやらしてもらったですよね。

メチャメチャ、かっこつけてましたね。色んな人も出てるんですよ、友だちも出てて。占いページとかもちゃんとあって。何ページぐらいあったやろ。30頁? 結構ちゃんとしっかり作って。紙っていうよりも、どっちかっていうとファイルみたいなヤツに入れた状態で。「MEN’S NON-NO」ならぬ「KEN’S NON-NO」のM」を「K」に変えられる器用なヤツがおって。それぞれみんな分かれてやってましたね。占い書くやつがおったり。おれはとりあえずモデル専門で。携わってたやつは10何人おったんやないですか。俺は発起人で、俺が表紙の雑誌を作るぞって。みんなもそういうの楽しかったでしょう。中ページの女の子の写真、俺が撮って載せたりしてたんで。

その後、役者やるために、大学こっち(東京)にしたっていう。勉強しました。デビューは23ぐらいで、2、3か月仕事がないということもありましたけど、それは別に普通だったので、焦りもなければ、いや「行けるかな」みたいなものもありましたけど、休みも嫌いじゃなかったし、若かったから、友だちと遊んでいればいいやみたいなのもあったし、でもやっぱり、「やりたいやりたい」というのはありましたけどね。

特に20代なんて、芝居を上手にとかなんてまず考えたことなくて。もちろん、その人物としてっていうのは大前提にあるんですけど、どんだけインパクト残せるか、そこですよね。上手な人たちは、その役になりきってっていうことをメインにやってるんでしょうけど、俺はもうそんなことよりも、まず目立つこと。そこが大きかったっすね。それでやってきたんで、1個1個に入魂してって。やっと今、その役として生きるっていうのをね、力の抜き具合が分かってきたって感じます。

常に血の通った人間でありたいって思うんですよね。もちろんセリフがあって衣装があって、用意された場所があって、そこでやってるんですけど、でもやっぱり、そういう人が、どっか違う世界でいるかもしれない。違う惑星にいるかもしれない。そういう思いでやってるし、そこに人って感動するんちゃうかなって思うんですよ。血の通った部分に。そこはきっとうまいヘタじゃなくて、心が共感したり揺れたり、その役の中に俺を見たり、その役の中に自分と全く似たような感情を見たり、「この人もそういう思いでやってるんや」とかね。そんな感じで、勇気づけられたり。

俺は小ちゃい頃、アニメにしても映画にしても、そういうのを感じて感動した時は不思議な気分でしたね。「実際にはいないんだ」という寂しさと、「でもいるぞ」という感じが両方あって、あの感覚がすごく感動したっていうか。

小さい頃は、「ドラえもん」もそうだったし、「ユニコ」っていうアニメも好きでした。あ、ユニコも手塚治虫先生すか。おれ、オカンに、大人になって言われてビックリしたんですけど、子どもの頃、机を和室に並べた寺子屋みたいな塾に行ってたんですけど、そこは「ブラックジャック」とか漫画も置いてたんですよ。俺の家にも「火の鳥」とか「ブッダ」とか置いていて、ちっちゃい頃から読んでたんですけど。一番最初に読んだのが「ブッダ」なんで。参観日にオカンが先生に「健太、どうですか」って聞いたら、「あのねえ、健太くんのねえ印象的なところは・・・」って、その先生が言ったのは、「手塚治虫のことを『手塚先生』って言うんですよ」って。俺それ、自分でも覚えてなくて。「あんた言われてたでえ」「えーってマジで」みたいな。自分の中で、先生だと思った何かあったんでしょうね。ええ、手塚治虫さんはすごいと思います。

そういうのが、無意識に影響っていうか、自分の中に入ってる部分があるかもしれないですね。だから、やっぱアニメであろうが、血の通ったものだったんでしょうし、感じたんでしょう。手塚治虫さんの本とか見て本当につらかったし。ブッダとかもね。1巻でお母さんが死ぬところなんてメッチャ悲しかったし。なんか、そういうことで感動してたのは、これは漫画だと思ってみてなかったんでしょうね。だから、見る人にはドラマ、映画、エンターテインメントとして見ていただくんですけど、どっかでまるで本当の出来事かのように、まるで本当にこの人はいて、汗を流して頑張っているかのように思ってもらえる芝居をしたいな、それができたらいいな。だって、なぜなら、そういう役者さんとかそういう漫画とかを見て、俺は感動して、憧れを持った部分がきっとあると思うんで。極端な役をやって、そんなやついないと思われたら、もうそれで結構きついっていうか。浦ちゃんだって、子供たちが「どっかでいる」って思ってるから、「浦ちゃーん」って呼んでくれてるんだろうし、その感じが役者冥利に尽きるっていうか。俺もそういう思いで芝居したりしないと面白くないっていうか。ただしゃべって、「今のうまく見えたでしょ、OK」みたいになってると、まあもう消えていくんでしょうね。消えていくし、そんな感じでやるんやったら、やらんほうがいいし。

 

――極端なキャラクターなのに、なぜか実際にいそうと思わせるリアリティー。役者としての矜持を聞かせてもらった後は、今、役者として歌を歌う気持ちを聞いていました。役者が歌うことに引け目を感じたり、謙遜したりする人もいる中、桐谷さんは気持ちいいぐらい真っすぐでした。

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いや、音楽好きやったら別にええやんっていう。単純に、どっからが役者でどっからがアーティストって線引きする必要もないし。人間なんだから、演技する瞬間も役者でなかろうがあるだろうし、いろんな人もいるし、誰だって歌いたい時もあるんだから。役者が歌手として出るのは、例えば後ろめたいとか、怖いとか、アウェイであったりとか思うかもしれないけど、「いや関係ない」みたいな。好きやもん、音楽。んで、芝居も好きやし。で、音楽好きなやつらが集まってるなら、それでええやん、みたいな。だからメチャメチャ普通に堂々と、僕は出てますけど。

――「海の声」や「香音―KANON―」を歌ったり、はたまた映画「TOO YOUNG TO DIE」の鬼のドラマーとしての出演も含め、「ミュージックステーション」には今年6回も出演しています。おそらく、本業の歌手でもこんなに出演している人は稀でしょう。さて、こうなってくると、楽しみなのは年末です。大晦日「紅白歌合戦」出場もありうるのではないでしょうか。健太さん、どうします?

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いやあ、まあ面白いすね。もし声をかけていただいたら。期待は別にしてないすけど。期待すると、なかった時にガッカリしちゃうので。期待はしないですけど、でもあるといいなって思ってるし。役者をやってて紅白出た人って、そんな、西田(敏行)さん、寺尾(聰)さんとか。最近歌手の人が役者っていう福山さんみたいなパターンはいらっしゃいますけど、なかなか紅白ってすごく言うても敷居高いというか。そこで、出させていただけることになれば、ものすごいありがたいですし。でも、俺歌手人生でどうしていこうなんて一切考えてなくて。やっぱり、音楽っていうように、「音を楽しむ」って書いてるように、楽しんでナンボだし、自分が楽しめてないのに、仕事が来るからしないといけないってなったら、それは本末転倒なので、自分から発信できる間はやり続けたいし、そういうやりつづける場がもちろんほしいですし、でも、いいと思います。役者の仕事が重なって、ずっとそっちに集中する時期もあっていいし、でもまた歌をやらせていただけることがあるなら、また新しい何かを生み出すきっかけになるかもしれないので、自分が喜びながら楽しみながら、プレッシャーがありつつもやっていけたら、ええかなって思ってます。

やっぱり今回の歌もそうですけど、役でもそうなんですけど、想像もしてなかった役であったり、そういうことがあるのが役者としても音楽の世界としても、俺は面白いなと思っていて。まさか自分が、浦島太郎をやるとは思わなかったし、そこで歌うなんて思わない。でも、それっていうのは、1個1個を一生懸命、遊び心を持ちつつやってきた、歩んできた道の先にあったことなので。三線もそう。こういうことがあるかもしれないと思って練習してたわけじゃなくて、好きでやってただけだから。だから、目の前にある好きなことを大切にして、それを楽しんで、一生懸命やってれば、また面白い何かに出合えるんじゃないかなって思ってやっていきたいと思ってます。何かを狙ってたり、ここに行きたいなっていうのを、今は考えなくなりました。今を大事にしたいなって。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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