♫お別れなのね〜っ、て歌にもあるけど、この季節はいろいろと別れの季節だよな。この連載も次回が最終回ってことで、今回はお別れに関するムチャぶりだ。でも、どうせ別れるのが分かってるんだったら、スカッといきたいよな、男だったら。ここで一発、スカッと別れさせてみろ!
どっちもダメ! の引き分け
それじゃ、今回もさっそく見ていくぞ。まずは「読売新聞」だな。「読売新聞」は「スカッと」させるものばかり探してきたみたいだな。皿を割って、笑って、空き缶を空に飛ばして憂さ晴らしか。しかし、空き缶を空に飛ばしたら、そのうち落っこちてくるんじゃないの? 気球で上げるだけ? 返ってきちゃうんだからお別れじゃねえな。不法投棄でもないけど、あんまり未練たらしくしてもしょうがないわな。リサイクルの時代なんだから、飲んだ後の缶はやっぱり、ぎゅっとつぶしちゃったほうがいいわな。お笑いライブの店も、笑ってストレス発散してスカッとするのか? 意味分かんないんだよ。ちょっと違うな。皿を割って憂さ晴らしも、自分ちの使わなくなった皿とか茶わんとかを持って行って割るならまだわかるけど、用意してもらったモンじゃ、他人のふんどしで相撲を取ってるって感じだよな。それこそスポーツジムに行ってサンドバッグをぶっ飛ばしたり、ボーリング場でピンを倒してもいいだろうし、単にストレス発散であれば他にもいっぱいあるよな。 別れるってことはさ、入学や卒業にしてもさ、もしくは犬とか猫を里子に出すとかさ、そういうときの「泣いて縁を断ち切る」的な、浪花節的なものが欲しいよな。どうも何かこう、回りくどいんだよな。もっと単刀直入にさ、それこそ「1+1=二十歳(はたち)」って形で表現してほしいわな。1+1が、二十歳(はたち)にもイタチにもなるんだよ? 分かるかなあ? そこで「TOKYO★1週間」のアイツラだが……どうもコイツらは、男女の別れの方に話を解釈したみたいだな。恋愛八段って、ウソつけ! 夢見てんじゃねえか? 別れるのに寝グソしてたんじゃなあ、母性本能はくすぐらねえわな。もう少し品のあることを考えろ、というか、作戦を練ってもらいてえよな。いままでずっと1年近くやってきたけど、今回もどうもアバウトというか「if」の話だよな。実際に体験した話はひとつもねえだろ! そんなわけで、今回はどうもどっちもダメだな。「読売新聞」の方もお題には全然合ってないしな。これじゃ勝負つかないね。引き分けだ。心の中で泣いてスカッと別れるのが男 お別れ、って話だと、オレもボクシングを引退するときは、ひとつの「お別れ」だったよな。でも残念ながら、スカッとお別れ、というわけにはいかなかったな。長年ずっと、青春と人生を費やしたものっていうのは、なかなかそうスッパリ断ち切るわけにはいかないわな。男女の間でも、未練たらしくダラダラするのが普通じゃないかな。「別れたら次の人」って歌もあるけどさ。なに、あれは「別れても好きな人」か? まあとにかく、別れたら次の人を見つけないといけねえしな。ボクシングも、小さいころから長い間打ち込んできたものをやめて次のものにはなかなか行けなかったわな。スカッと、ってわけにはいかなかったよ。 そういうとき、気持の切り替えはそう簡単じゃない。オレの場合は、やっぱり時間がかかったな。時間をかけて、段々と気持が褪せていくというのかな。煙草の煙が薄くなっていくように、気持も段々離れていくんだ。そうやって自然に離れていくもんなんだ。 だから、男女の別れも、未練があって当然。だけど男だったら、そこにプライドを持っていればこそ、スカッと別れられるのかもしれないな。でもな、心の中では泣いてるんだよ。男っていうのは、そういうもんじゃないの?
読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。