柿食えば、鐘が鳴るなりオッケー牧場、ってな。もう秋だ。秋といえばゲージュツの秋、アートを味わう季節だ。オレも映画とか史跡の見学とかに行くけど、もっとこう、オレにふさわしいアートはないのか? ファイターらしいヤツだ。そう、秋だからこそ「闘うアート」探してこい!
発熱でドクターストップ「読売新聞」勝利 さて、じゃあ今回もどんなのが出てきたか、ジャッジしていくぞ。まずは「読売新聞」な。「銅」の黄金町のバザール、要するに町おこしだな。こういうのは、いわゆる趣味多才の人じゃないと、なかなか足を止めないよな。興味のある人じゃないとな。よくそこらにスプレーとかでいたずらアートしているヤツらがいるけどな。「銀」はそういうのをルールに則ってやってるのか。オレもサインを頼まれるときに、他人のサインの裏とかに書いてくれって人がいるけど、それはいつも断るな。前に書いた人に失礼だしな。だから、他人の作品の上に重ねて描くっていうのは、よっぽどいいものじゃないとな。上に上に描き殴っていく、下の作品より上に行かなきゃならない弱肉強食の世界みたいなところあるな。そして「金」はゴミを衣装にする女の子たちな。基本としてゴミは拾いましょう、というのがあって、自分たちの好きな音楽もやる、趣味と実益を兼ねてるようなもんだ。ゴミ拾いの哲学ってあるらしいけど、なかなか人のやらないことをやっていこう、ってね。大事なことだね。 対するコイツ等(「TOKYO★1週間」)だが……。歌舞伎町の殴られ屋ってのは、オレの後輩の晴留屋明だな。しかしこれとアートと、どういう関係があるんだ? 意味わかんないね。オレの事務所にもよく遊びに来てたヤツだけど、ひとつもアートじゃないよ。体を張ってね、殴られ屋として、殴る人のストレスを解消しながら、それの代償として少しでもファイトマネーつうかな、生活資金を得るというね。アートというかファイトだな、晴留屋のファイトは認めてやるけど、アートとは何も結び付かない。あとはライオン? これって見に行っただけだよな? で、彫り物? 「絶対闘いたくございません」、最初から試合放棄してるじゃん。もうちょっとな、審判のしがいのある勝負をしてほしいんだ、オレは。これじゃ熱でストップでしょ、発熱で。また勝負にならなかった、ってことで「読売新聞」の勝利だ。
心の余裕が絵心を生むんじゃねーの? オレとアートって言ったら、映画を見るくらいで、絵や彫刻はあんまり興味ないんだな。絵心がないんだ。 絵とかってのはね、ある面では心の余裕つーかな、生活のゆとりじゃないんだよね。精神的なゆとりがないと、ああいうものには没頭できないんじゃないかな。でもオレは子供のときからそういうことに触れてなかったからね。太陽が明けたら起きて、暮れたら寝て。明るい間はヤンチャばっかりやってたわけだからね。その延長としてボクシングをやるようになったけど、相変わらず精神的余裕はないよね。その日暮らしで毎日送ってたわけだからね。やっと最近になって、仕事柄、勉強っていうかね、ある程度の知識は必要だから、少しは本読んだり、いろんな芸術っていうのかな。そういうものに触れる機会もできてきたけど、絵を描いたり見たり、ってのは、なかなかないんだよね。 でもな、最近あるマンガ雑誌で、オレが4コマ漫画を描いたんだよ。雑誌の企画でね。この年になって、絵心がつくのかどうかわからないが、やっとオレも精神的ゆとりができてきたってことかな。 オレが描いても、やっぱり「闘い」にはならないな。世間の仕組みみたいなものを描きたくなるから。ってことは、アートで闘うってのは、なかなか難しいってことだな。でもさ、それにこだわらず、やってみりゃ "牧場" なんだよな。
読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。