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「萌え」って何?

2006年4月21日

 テレビ番組でおたく特集のようなことを放送しているのを見ると、いかにもそれっぽい外見の人が「萌え~!」と言ったり叫んだりしているのに出くわします。「萌え」という言葉が表面的にとはいえ、今のように広く世間的に知られるようになったのは、こうしたテレビ番組の力によるところが大きいでしょう。が、普通のおたくはあんなふうに人前で公然と「萌え」なんて言いません。大抵のおたくの人はサービス精神旺盛(気が弱いとも言う)なので、スタッフから頼まれると、必要以上に張り切っちゃうことが多いんだと思います。「萌え」という感情を抱くことはあっても、音声として「萌え」と発する機会はそうそうないんじゃないか、というのが個人的実感です。

 では一体、「萌え」って何でしょう。一度でも「萌え」を感じたことのある人にとっては確かに存在する感情なのですが、これを言葉で説明しようとするのはなかなか難しく、ネット上で検索してもあちこちで様々なことが書かれています。私自身、かつていろいろ考えてそれなりに結論づけたこともあるのですが、とりあえず非常に大ざっぱに言うとするならば、要は「かわいい」に近い意味であろうと思います。かわいらしいもの、自分が愛おしいと感じるものに接した時に生じる、どうしようもない感情の高まりが「萌え」である、と。

 ここで注意したいのは、「かわいい」が対象についての評価である一方、「萌え」は自己の感情の発露である、という点です。相手がどうであるかということは問題にせず、ただ単に自分が相手に対して愛情や思い入れを抱いていることを表明するだけの一方通行の言葉であるとも言えるでしょう。女性だって、男性から「かわいい」と言われればうれしいでしょうが、「萌え」と言われても微妙な思いを感じるのではないでしょうか。その意味で、「萌え」とはおたくの自己中心的な側面が端的に表れた言葉なのかもしれません。

 しかし考えてもみて下さい。おたくが思い入れを抱く対象は、主にアニメや漫画、ゲームなどに登場する2次元の世界のキャラクターです。現実の人間ならば、思い切ってアタックすればひょっとしたら思いが通じる可能性があるかもしれませんが、2次元の存在にいくら「かわいい」と言ってみたところで、相手が応じてくれるはずはありません。それでもなお、胸の奥に沸々とわき上がる熱い思いを抑えきれない――。その状態を「萌え」と言うのではないかと思います。非現実的存在への恋愛感情と言い換えてもいいのでしょうが、そうストレートに言うことはさすがに気恥ずかしいので、「萌え」という言葉に代えているわけです。

 最近はアニメや漫画のみならず、アイドルやペットなどに対しても「萌え」を使うことがあるようですが、これらもやはり、自分の思いに対象が応じてくれる可能性がない(低い)という点で、2次元の存在と共通性があります。こちらのサイトでは「"萌え"とは対象への到達不可能性による絶望が予め自らの内に含まれた渇望である。」と説明されていますが、非常に的を射ているように思います。

 長々と書いてきましたが、おたくたちは決して馬鹿の一つ覚えみたいに萌え萌え言っているわけではありません。自分が好きな対象への思いが成就することは決してないけれども、だからこそ対象とより近くありたい、というやむにやまれぬ情動を秘めて「萌え」という感情を抱いているのだ、ということを理解して頂ければ幸いです。まあ、最近は「萌え」という言葉自体もかなり手垢にまみれてきて、おたくの間ではあんまり使われなくなっているようにも感じますが……。

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 読売新聞の水曜夕刊に掲載されている新感覚カルチャー面。旬の人のインタビューコーナー「ALL ABOUT」を中心に、若きタカラジェンヌの素顔に迫る「タカラヅカ 新たなる100年へ」、コラムニスト・辛酸なめ子さんの「じわじわ時事ワード」といった人気連載に加え、2016年4月から、ポルノグラフィティのギタリストのエッセー「新藤晴一のMake it Rock!」、次世代韓流スターのインタビューコーナー「シムクン♥韓流」がスタート。オールカラー&大胆なレイアウトで紹介する2面にわたる企画ページです。

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