こんにちは、こんばんは、おはようございます。popstyle編集長の森田睦です。
明日(17日)の読売新聞夕刊の見開きカラー「popstyle」のメニューは
- 「ALL ABOUT 松村北斗(SixTONES)」
- タカラヅカ 新たなる100年へ「潤花」
- イマ推しっ!「没後70年 吉田博展」
- 辛酸なめ子のじわじわ時事ワード「半モヒカンの公妃」
- 渡邊圭祐「箸休め」
- 霜田あゆ美の今日はどんな日「天使の囁き記念日」
- 注目「吉岡里帆 LIFESTYLE COLLEGE」
です。
明日午後3時30分に松村北斗さんの取材こぼれ話をアップする予定です。
今回は、私が執筆を担当した吉田博展のことを書かせてください。
吉田博(1876~1950年)は明治~昭和に活躍した画家で、木版画が特に評価されています。その木版画を集めた展覧会が3月28日まで東京・上野の東京都美術館で開かれています。
ちょっとpopstyleの紙面で取り上げるには異質な題材だと思いますが、今の時代だからこそ若い人にその画業を知ってもらいたいと考えました。
1923年、関東大震災が発生し、日本経済に甚大なダメージを与えました。多分に漏れず多くの画家も困窮しました。
そこで吉田たちは海外、特に「狂乱の20年代」と言われ経済発展めざましいアメリカに活路を見いだそうとしました。吉田は自分や仲間の作品約800点を持って販売のため渡米しました。
アメリカで評価されのは西洋人になじみのある水彩や油彩ではなく、浮世絵の流れをくむ新版画という木版画でした。江戸の面影が残る日本の風景や風俗を描いた版画が受けたのです。
帰国後、吉田は本格的に版画に取り組むようになり、西洋で需要があるよりノスタルジックな風景を主題に選ぶようになりました。だからといって、浮世絵のモノマネをしているわけではありません。西洋の絵画技法も取り入れて、吉田ならではの画風を確立していきます。
同じ版木を使いつつ、色を変えて摺ることで、朝の景色、日中の景色、夕景、夜景といった時間の異なる風景にした連作も一つの例です。(写真上=「瀬戸海集 帆船」の連作)
吉田はアメリカやヨーロッパ、インド、東南アジアの風景も描いています。
「日本の技法で描くのだから、どうしても日本っぽくなっちゃうんじゃないの?」
そんな偏見は吹き飛んでしまうくらい、グランドキャニオンも、マッターホルンも、タージマハールも、どの風景の絵もしっくりと、すんなりと目に入ってきます。
(写真下=左が「タジマハルの朝霧 第五」、右が「タジマハルの夜 第六」)
「輸出」を意識しすぎて、西洋に媚びバランスを欠く作品が散見される中、吉田は海外展開を意識しつつも和洋絶妙な案配なのです。
イギリスのダイアナ元妃は吉田の「光る海」「猿澤池」を執務室の壁に飾っていました。心理学者のフロイトも「山中湖」を書斎に掛けていたといいます。
日本では、2016年に20年ぶりの大回顧展が開かれましたが、それから5年と空けずに今回の展覧会が開催されるなど人気の上昇とともに、再評価が進んでいます。
少子高齢化が進む日本。劇的な内需拡大が見込みにくく、改めて海外に目を向けなければならない状況です。苦境にある日本から海外に活路を見いだした吉田の作品から、もしかしたら何か学べることがあるかもしれません。
ついつい堅苦しいことを語ってしまいましたが、気軽に見て楽しめる展覧会でした。