攻めてるP鼎談、中編、全然入りきらなかった「続き」をこれでもか!と一挙公開!!

 Pteidan どうも、モヤモヤダイエッター、(森ゾー)です。初回から大好評をいただいている「攻めてるプロデューサー鼎談」ですが、中編となる今回も案の定、ものすごーく大量に対談内容がこぼれ落ちてしまいました・・・。余りにももったいないので、前週に引き続き、このブログで続きをやります。中編のテーマは、「視聴率への考え方と、ゴールデンと深夜の違い」です。ブログの部分だけを読むと、加地さん、伊藤さんに比べて藤井さんがほとんどしゃべってないようなイメージを持たれるかもしれませんが、これは私による「編集」の結果です。本当は、もっとたくさんしゃべってもらっていますが、紙面に多めに収容した結果、ブログではこうなりました(写真は左からテレビ朝日・加地倫三、TBS・藤井健太郎、テレビ東京・伊藤隆行プロデューサー)。

 夕刊が手に入らない地域の方などは、このブログだけを読んでいる方も多いかもしれません。せっかくですので、ぜひ紙面も手に入れて確かめてくださいね。では、前回よりも相当、長くなっているので、覚悟して、じっくりお楽しみください!(夕刊を取り寄せるマニュアル

――さきほど(紙面)の加地さんの話の中で、あの方(紙面参照)が「『アメトーーク!』は楽しんでいて、『ロンドンハーツ』は闘っている」と言っていた理由を、もう少し詳しく教えてください。

加地 「アメトーーク!」は本当に、みんなで楽しく面白く作ってるだけです。視聴率もほとんど気にしてないし。一方で「ロンハー」の場合、ゴールデンタイムを死守しなきゃいけないという気持ちがあります。たとえば面白い番組、笑える番組が全部深夜になっちゃったら、多分ゴールデンタイムに若者は一切、テレビ見なくなりますよ。テレビのスイッチがゴールデンにつかなくなると、おのずと23時台もテレビがつかなくなる。だからこそ、ゴールデンにテレビをつけさせることが大事であって、子供のうちからお笑い番組を見せるというのもすごく大事なんです。ゴールデンできちっと面白いことをやらなきゃ。多分、伊藤さんが「モヤモヤさまぁ~ず2」と「やりすぎコージー」をゴールデンに上げたのもそこでしょう。それだけじゃないとは思うんですけど。

伊藤 「モヤさま」は、旅のトーク番組ですからね(笑)。そこはテレ東王道のラインです。

加地 「モヤさま」については、あれをゴールデンでやるっていうのは面白いんじゃないかなとちょっと思いましたけどね。

伊藤 「やりすぎ」昇格の時は、出演者やスタッフは、血は流しましたね。やっぱりアホなことバーッとやるんですけど、どうしてもズコンとはハマらない。時間も月曜21時、水曜22時と転々として、ゴールデン帯は正直、格闘でした。とはいえ、「置きに行こう」ともせず、番組らしさを貫いて普通に終わっていった。僕はそれで良かったと思ってます。実は、「やりすぎ」を月曜21時にしようとウチの会社の編成が最初に言ってきた時、「何て面白いこと言うんだ!」と思ったんです。あー、その発想はなかったなー。ウチの社員は「えーっ!?」て言うだろうなぁ、「えーっ!?」は良いよなー、と思って。視聴者が求めているかどうかは別にして、視聴者が「何やってるんだ、こんなところで!?」というのは、1個のパンチの出し方ではないのかなと。

加地 でも、深夜とゴールデンでは見ている視聴者が変わるからね。

伊藤 だから、そこで見ている視聴者にはごめんなさいなんです。局の事情で放送時間を変えるというのは。ただ、今はゴールデンが「根本的にイヤか」と言われれば、そうではない。

――鈴木おさむさんがお正月のNHKの番組で言ってたんですけど、加地さんはあえて「アメトーーク!」をゴールデンに上げないよう、ゴールデンのスペシャルでは視聴率を落とそうとしていると。終盤に江頭2:50さんを出すことで、F層(女性視聴者)を全部チャンネル変えさせてるって。

加地 それは、都市伝説です(笑)

伊藤 マジすか?(笑)

加地 基本的な考え方としては、ゴールデンタイム、僕だったら「ロンドンハーツ」。ロンハーに関しては数字が良いに越したことはない。だから毎回、ベストは尽くします。ある程度わかってくるんですよ。番組の流れ、裏番組の環境、そうすると、だいたいこんな感じの企画をやれば10%は取れるだろう。うまくいけば14、5%は取れるだろうと。ベストが11%かもしれないからやめるということは、しない。11だったら、11の中でのベストを目指す。まずは9・9%にならないための努力をする。マックスが15%だとしたら15を目指す。17%を取れる企画なら17を目指す。そういうやり方です。スタッフの生活もかかってるし、ロンドンブーツのタレント生命にもかかわるので、終わらしてはいけない。終わらせないためにも、毎週数字を取るための作業をする。するとやっぱり、いつか苦しくなるんです。次の準備をしていかないと。たとえばAという企画が当たって、やり続けてれば毎週数字は安定するけれども、そればっかりやっていたらどこかで飽きられて、いきなりガクンと数字が落ちる。いざ飽きられた時のための次の準備は、良い時にこそ仕込んでおくべきです。良い時こそ、チャレンジや失敗ができる。「ロンハー」で言ったら、僕はどうしても「恋愛大好き!男子ゼミ」という企画(※1)をやりたかった。やったら、前の週に14%だったのが、次の週、一気に7%に下がった(笑)。数字が半分に落ちた。「やべー!」って、次の週のオンエアのラインナップを急きょ変えて、10%に戻した。でもこの7%は、必要な7。攻めたというより、勉強になった7。「こういうことやると7になるんだ」というのを学ぶのは大事なことだと。(収録前は)11って言ってましたけどね。

全員 (笑)

加地 11の企画で、(司会の)淳にも「これは多分11%しか取れない。取れないけど、こういう企画もやらなきゃいけない!」とメシに誘って説得しました。それで、7%、ビックリ。「こうやったらダメなんだ」とわかった。だから、その後はまた逆に数字が安定するようになりました。

藤井 僕も、数字を取るためにじゃあ「ペット」をやりますか、「ご飯」をやりますかってことは、しないです。面白いものの中でちゃんと数字を取る努力をする。どこの層を狙おうとか、考えないです。自分が面白いと思うものをやるのが最優先なので。もうちょっとこうしたらこの層が見るんじゃねえかな、自分としては面白みが減るけれどもこっちにしようというのは考えないですね。自分が面白いと思うことをやって、結果的に取れたらいいとは思いますけど。ただ、「ガチ相撲」(※2)は、(数字)取れると思ってました(笑)

伊藤 ガチで思っていた(笑)

藤井 はい。でも結果は2回とも、10%行きませんでした・・・・。

伊藤 「9・9」と「10」とか、「6・9」と「7・0」とか、この差が、すっごいショックなんですよね。

※1「恋愛大好き!男子ゼミ」・・・・「ロンドンハーツ」で2011年5月24日に放送された新企画。「やたらとボディタッチしてくる女って、どんなつもりなの?」「男はすっぴんが好きなのに、なぜ見せたがらない?」など、恋愛に関する疑問と持論を芸人が女性100人を相手に語りあった。綾部祐二(ピース)、後藤輝基(フットボールアワー)、田中卓志(アンガールズ)らが出演。

※2「ガチ相撲」・・・・「クイズ☆タレント名鑑」の中で2011年春と秋に2回行われたスペシャル企画。プロレスラー、総合格闘家、ボビー・オロゴン、気功師の柳龍拳など、各界(×角界)からそうそうたるメンバーが集まり、トーナメント形式で対戦。有吉弘行やFUJIWARAら解答者に優勝者を予想させるという「クイズ」企画だった。3月末に予想される最終回の企画も「ガチ相撲」ではないかとの噂が立っている。

――統計学的には、意味のない差のはずですけど。

伊藤 でも、印象がすごく変わってくるんですよね。こんなに数字に翻弄されている我々って、バカだなって。

――今の若いテレビマンたちで志や熱意を持っている人は多いですか?

藤井 テレビ好きで、かつ「面白いものを作りたい」という熱意がある人は少ない気がします。それは僕も含めて、作り手の責任だと思います。ちゃんと面白いテレビをたくさん作り続けていれば、もっといい人材が集まってるのではと思います。

――今も昔も、若手のAD(アシスタント・ディレクター)って大変なんですよね?

藤井 今はそうでもないですよ。

加地 (笑、あそこでADが見学してますよというゼスチャー)、もしかしたら、こういうとオッサンだと思われるけど、熱意うんぬんは、世代の差じゃないですかね(笑)。どの業界もそうだと言われてません?

伊藤 結構、テレビを希望する人自体が少なくなってくるのは明々白々なんですけど、「もったいねえなあ」と思います。だって、こんなに楽しい仕事はない。テレビは見ていて楽しいもの。その作り手になれて、次の日に「視聴率」という答えが出て、一喜一憂して、「ああー!」って言っている間に、給料をもらえる。何らイヤなことはないですね。楽しいエンターテインメント。まあ、(視聴率がものすごく悪くて)二度寝することも、エンターテインメントの一環でして(笑)。テレビそのものに興味が無くなっているとすると、作り手が本当にやりたいものを貫いている番組がやっぱり減っているからなんです。僕はね、これだけ民放とNHKとチャンネルが増えてるんなら、もう少し自由闊達(かったつ)な番組が増えてもいいと思います。ある程度、度肝を抜くとか、こんな作り方あるのか!というのを。20%取っている番組が「面白いか面白くないか」という議論は出ちゃうと思うんですけど、僕は20%の番組そのものを否定しているわけではない。それはあっていいんですけど、そんなのばっかりの番組になる必要はないでしょ、と思う。今の若いテレビマンが、大学生が見たいテレビを僕らが本当に作っているのか。自戒の念も込めて、我々ぐらいの世代が示していかないと、どんどんつまんなくなっちゃうんじゃないかなと危惧はしてます。

――皆さんは、20~30代の若い層に向けた番組を作りたい気持ちが大きいですか?それとも全世代対応型ですか。

加地 20代、30代の時はそうでした。自分はもう40代になったから、たぶん自分がやっていることは多分、もうちょい上がっているのかなって。ただ、個人視聴率は、M1(男性20~34歳)とかM2(男性35~49歳)とかで出るじゃないですか。M3(男性50歳以上)、F3(女性50歳以上)だけがすごく高い数字で世帯視聴率15%取った時は、「あっ、いかんな」と思うんですよ。それで、世帯視聴率が12・5%で、M1が2ケタ、F1が2ケタ、T(10代)も2ケタ、それでM3が2%、F3が2%・・・・・、「よっしゃ!」っていう(笑)。

――本当は世帯視聴率だけでものを考えちゃいけないんですよね。

加地 一時期は、若年層というか、若い人たちの方が購買力があるからM1とかF1とかを目指して作りましょうという時代もあったんですよ。でも、テレビ局同士の視聴率競争があって、それはどの指標で争うかというと、世帯視聴率。だから、世帯視聴率が良いことが一番良いことになっちゃう。世帯視聴率しか結果として残らない。そうなると手っ取り早く、・・・いや、手っ取り早くやっているかどうかは分からないですけど、TとかM1、F1層を取るよりは、M3、F3層を狙った方が、全体のパイが多いので楽ということになる。「数字が悪い、数字が悪い」と、お上(かみ)に言われた時にどうするかというと、やっぱりそこに狙いにいく。さっき藤井君も言っていましたけど、たとえば「料理」とかね。それで、安易な、どっかの番組でやったような、似たようなことをやって、結果、惨敗して終わることになる。あの番組とこの番組を足して2で割ったような、こことこことここを3割ずつ取って来たような番組がどんどん増えちゃっているのは、世帯視聴率が免罪符になって、それを取るためにこれをやるのが「しょうがねえな」という部分が多分、あるから。やっぱり、テレビというのは色々な可能性、多様性、色々なことをやらなきゃいけなくて、そのバランスじゃないですかね。深夜は深夜としての役割があるし、深夜があまりにもゴールデンタイムの登竜門になりすぎているのは、良くないと思いますね。

――テレ朝は一時期、ほとんどそうでしたよね。深夜番組で人気が出て、ゴールデンに上がって、いつの間にか終了・・・。

加地 自局のことはわかんないです(笑)

伊藤 あとやっぱりね、ウチは、どっかでエロを背負わなきゃいけない。

加地 テレ東の、意味のわかんない深夜ドラマ、グラビアアイドルが出てくるやつ、あれ、すごくいいですよね!

伊藤 ドラマだけでなく、もっとバラエティーでもね、やらなきゃいけない。こないだね、ある人から「エロなんかやるな」と言われたんですよ。でも、「それ、本当に言っていいんですか?」と。「じゃあ『オシャレなエロ』だったらダメですか?」と。確かにエロなんだけども、番組としてはバラエティーという、うまい仕組みになっていたら?「エロはやめろ」というと、その可能性すらもつぶしてしまう。「エロはダメだ」と決めつけるんじゃなくて、エロに振れたら面白い番組になるなら、やっちゃえばいい。「やんなきゃいけない」とも少し違うけれど、今は地上波にエロがあまりにもなさ過ぎると思っています。

加地 健康的なエロは必要なんですよ。「ロンドンハーツ」は、女性のスポーツテストを毎年やってますけど(2時間スペシャルで2月14日に放送)、あれはね、健康的なエロ。安心してお父さんたちも見られるという(笑)。

伊藤 加地さん、年齢とともに変わったんですか?感性。20代、30代の時と。

加地 えー? わっかんなーい!

伊藤 僕は今、39じゃないですか。前厄なんです。何か、変わりました?

加地 でも、出演者も僕も年齢が上がっていってる。若手っぽくやっているザキヤマ(アンタッチャブル・山崎弘也)だって36歳。有吉(弘行)は37だし、雨上がり決死隊は40代前半。ロンドンブーツの亮は40で、淳は38。みんな一緒に年齢が上がってるから、みんなで楽しいトークをやれてる。「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ系)を見て、僕は何だか物足りないと思っちゃったんですよね。それは、もしかしたら世代の差かもしれない。ただ、自分の中にないことをやることほどカッコ悪いことないよね。10代の服、今着ないでしょ?

伊藤 着ない着ない(笑)

加地 今やっている番組で、ロンハーとかでM1層が取れたりすると、一応、若い子に響いているんだという安心感は覚えますけどね。

――テレ東は常に実験といいますか、すごいことやってやろうという意気込みがあります。

伊藤 やっぱり、歴史的にも「一番外地」と呼ばれてきた局ですから、視聴者の方も、ぱっとテレビ付けたら、何か変なことやってりゃ見るという位置を、僕は受け入れた方がいいと思ってるんですよね。クラスの端っこにいる子のような。

加地 それ、いつも言ってますよね。

伊藤 「あいついい奴なんだよな」という愛され方をした方がいい。そいつが結構、急にぶち切れたりしたらビックリするじゃないですか。そういうファイトスタイルで、バラエティーは多少、トンガってるとか、丸すぎるとか。いずれにせよ、ちょっとやり過ぎるぐらいがいいのかな。

加地 それ、どうなんですか。社内的に。きっと佐久間君(テレビ東京・佐久間宣行プロデューサー。「ゴッドタン」などを担当)なんかも同じ考えでしょうけど、割合的に。

伊藤 僕と佐久間以外は、みんな違うんじゃないですか。

全員 (笑)

加地 何となく改編の感じとか見ていると、違うなと。

伊藤 5対700ぐらいという印象(笑)。結果的に「あれ、面白かったよ」と言ってくれる人はいて、いい数字が出るとすぐに来る。

加地 言ってくれる人っていますよね。「応援しているよ」って。

伊藤 応援してくれるなら、最初からもっと応援しろよって話なんですけど(笑)。さっき企画書の話が出ましたけど、企画書なんかウソでいいんですよ、極端な話。完全ウソじゃいけないんですけど、企画書出して、こういうことやろうと言った後に、もっと面白いこと思いついちゃったら、そっちにガッと変えちゃっていい。この企画ならもっとエッチな方がいい、男がやるより女がやった方がテンション上がるな、とか。どんどん変えていく。各局さんがどうか知らないんですけど、ウチはけっこう企画書を読み込む会社なんですよ。企画書ベースの会社。で、もう読みまくっちゃって、頭でっかちになっちゃって、企画書を超えないで終わる番組がけっこう多くなってきてる。

加地 (ささやくように)でも、全部そうじゃないすか。

伊藤 そこを、「たかが紙」と思えるか。

加地 見てて分かりますよね、「あー、これ企画書ヅラがいいなー」とか。

伊藤 「溺れたな」とか(笑)。「これ出してきた人、若かったんだろうな」とか。「腹が座ってないな」とか。

――もっと低い年齢層に向けた番組もやりたいと思ってますか?

加地 いや、恥ずかしいですね。照れくさいですね、もう。

伊藤 ビックリするぐらいスベッてると思われるでしょうね(笑)。後輩たちからも。

加地 無理してるねー、とか言われそう(笑)。藤井君とかが、どんどんやってってほしい。若い子が出す企画書が、おっさんっぽい企画だと何かガッカリする。その子たちが、次、30代になってテレビバラエティー界を支える。その子たちの企画を、学生たちが見て次の日に学校で「あれ、見た?」としゃべることが無くなっちゃうと寂しい。各世代、各世代がそれぞれの役割を果たしていかないと。だから藤井君が31歳の若さで「タレント名鑑」やっているのは、すごくうれしいんですよ。

【22日掲載の(下)に続く】

 いかがでしたでしょうか。長かったでしょう・・・・。でも、次週はもっと長くなる、予定です。「攻めてるプロデューサー対談(下)、紙面もブログもお楽しみに!

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