宿のおばちゃんにおにぎりを3つ作ってもらって、朝の5時15分に民宿を出発。その時点ですでにザーザー降りでした。考えてみたら、このごみ袋レインコートには、ノースリーブという弱点がありました。ものの15分で、ジャンパーに雨水が染み渡り、それが胸や腹の部分までやってきて、冷たいわぐじゅぐじゅだわで、泣きそうでした。
雨はそのまま午後2時過ぎまで降り続けましたが、その間、私は20番鶴林寺(かくりんじ)、21番太竜寺(たいりゅうじ)と、ずっと山の中をさ迷い歩きました。まさに、山頭火っぽく言えば「分け入っても分け入っても雨の山」です。阿波の三大難所に数えられるのがこの20番〜21番コース。山に登って、降りて、また登るという、元・猿岩石の有吉さんのようなに浮き沈みの激しいルートなのです。ちっちゃいカエルやら、サワガニやらが、山道で私の前を気持ちよさそうに横切っていきます。
全身が完全に水にひたって、ようやく晴れたのが午後3時ぐらい。昨日のお遍路の達人が「雨の日は歩かない」といっていた言葉が心にしみます。もう、こんな役立たずの東京都指定ごみ袋に用はないので、道の駅のごみ箱にごみ袋を捨てました。やっぱり、雨具はきちんとしたものを買った方がよかった、という当たり前のことを実感した1日でした。
午後4時、きょうの目的地の22番平等寺の直前で、道を間違えて別方向を歩いていた私を「おーい」と遠くから呼び止める声がしました。同じ宿で、私より後に出発した歩き遍路の2人(鈴木さんと上田さん)に追いつかれてしまいました。昨日、民宿で晩ご飯を食べながら話した人たちで、2人とも還暦前後のおじさん方です。「あれ、朝早かったからもう23番まで行っちゃったのかと思ったよー。だいぶゆっくりやねー」と屈託ない感じで言われ、少し凹みます。それでも、歩き遍路のこうした出会いも楽しいものです。別にずっと一緒に歩くわけではないけれど、先に出たり、追いついたり、追い越したり、ばったり行き会ったり。お遍路とは、人生の出会いの縮図のような気がしてきます。まあ、若い女性はめったに見ませんけれども。そういえば、きょう初めて外国人の歩き遍路2人を見ました。写真撮っておけばよかった。
今、宿について風呂であったまって、ようやくのんびりしているところです。明日は徳島県の最後の寺、23番薬王寺を目指します。そこまでは約20キロあって、その次、高知県に入った24番最御崎寺(ほつみさきじ)までは、23番から75キロ!もあります。さきほど、宿のおばちゃんから「宿に泊まった人が置いていったんよ」と言って、四国88か所の「野宿リスト」をくれました。これはすごい。23〜24番は長いので、野宿スポットもけっこうあるようです。行けるところまで、行ってみて、もしかして野宿にも挑戦しちゃったりもするかもしれません。