こんにちは(森)です。今回のALL ABOUT太田光、いかがだったでしょうか。談志師匠と太田さんの取材時間は20分ちょっとだったのですが、スープストックで売っているクラムチャウダーぐらい、どろーりと中身が濃い内容を聞き取ることができました。下に載せた「脚注」も、普段のラジオ・テレビ欄の紙面としては書けないような、遊び心を交えて書いてみました。
メーンの写真の、談志師匠が太田さんをヘッドロックしている構図は、私からお二人にリクエストしたものです。これは、かつて談志師匠が、師匠である柳家小さん(先代)の大きな丸い頭にヘッドロックをかけた、という「伝説」を再現してみたい、という思いからでした。でも、「歴史は繰り返す」という意味では、本当は太田さんが談志師匠にヘッドロックをかけた方が良かったのかもしれませんが、とてもそこまで言い出す勇気はありませんでした。「めざにゅ~」のディレクターさんに頼んでもらえばよかったかも・・・。
それでは、紙面に載せられなかった部分の対談を、ここで紹介したいと思います。
【DVDタイトルの意味】
――DVDの「笑う超人」というタイトルの意味、そのタイトルに込められた思いは。
太田 「超人」というのは、僕のことではなくてもちろん師匠のことです。俺のことだったら凄い。
談志 お前だって超人になるよ。
太田 いえいえ・・・超人といったらニーチェじゃないですか。でも、果たしてニーチェは超人だったかな、とずっと思っていて。ニーチェと立川談志とどっちがすごいといったら、僕の中では立川談志の方が全然凄い。だからニーチェが使った超人という言葉を、むしろこっちでもらいたいという思いが実はありました。ニーチェにもうちょっと才能があれば、落語ができたでしょうに。
【談志師匠にとって落語とは】
――太田さんから今回のお仕事を受けまして、師匠の率直なご感想を。
談志 落語というのは、落語という出来上がったストーリーを、それぞれが演出して、自分の持っている色々な部分をその出演者に全部、投影してしまっているんです。たとえば手塚治虫先生がブラックジャックも、やれキリコも「みんな私の分身です」と言ってますけど、私そのものという部分も、落語の中に投影している。それを好んでくれた太田のセンスというか感覚ですね、それを俺はありがたいなと思います。俺と俺の作品に目をつけてくれたということは、俺にとって力強いことですよね。前から分かってましたけどね。太田に会った瞬間にね。
――今回、師匠の高座を演出したことで、大変だったり、苦労のあった部分は?
太田 演出というのとはちょっと違う。もちろん師匠の落語に口出したわけではない。ホントに師匠にいつもの感じでやってもらって、あとは編集ですね。落語の映像化というのは今まで、だいたいカメラ3台ぐらいで、わりと劇場で見ている感じで撮るというのが当たり前で、それを今回はカメラ7台つかって、アップがあったり、たもとがあったり、ちょっと揺らしてみたり、ということをそれぞれの考えでやってみた。ここのシーンは寄りで、ここは引きで、というのを僕が編集した。それに関しては「こんな風にいじくっちゃっていいのかな」と、今までの落語の映像化に慣れている落語ファンにとっては「うるさい」と言われちゃう可能性も考えたんですけれど、今回、師匠が「好きなようにやっていい」って言われたんで。本当に自分が思うもの、自分が見たいところの映像で編集した。僕なりには、今までにない作品になったと思う。
談志 お前、今回みたいにあんまり宣伝というか、宣伝というのを借りてやるタイプじゃないだろ?
太田 いや、意外としているんです(笑)。今回(の宣伝)は、できれば世界中の全員にこのDVDを見てもらいたいから。落語もそうですけど、立川談志という落語家を、名前を知っていても、本当に見たことがない人たちというのがいるのが、知っている自分からすると、ホントもったいなくてしょうがない。師匠にお会いするたび、落語みるたびに、「もっと多くの人に、見てほしい」と思ってました。
談志 自分でも抱きしめてやりたいようないい出来の時がある。けど客席にいるのは多くて2000人、まあ1000人、人口でいったらたかが知れているんですよねえ。まだ内容は見てませんから分かりませんが、それらを解決しようとやってくれた点に関しては大感謝ですね。
――師匠はこういう人に見せたい、というのはありますか?
談志 うーん、馬鹿にみせてもわかんねぇしなー。別に見たからといって犯罪になるわけじゃないからな。見てもらうのは構わないけどね。逆に言うと、分かる人だけ見てほしいというのも、自分の弱さをさらけ出しているのかもしれないし、全然違う方角からつぶてが飛んでくるかもしれない。全然違った角度から、歓声なり、罵倒なり、求めるにしろ求めないにしろ、あるでしょうからね。そういうのがあることは肯定したいですね。肯定しないと、終わらないんじゃないか。だけどそう言っている、これもあくまでも余談ですけどね、そういっている自分も二律背反しているじゃないかと。二律背反していることを含めて、俺は存在しているんだ、という意識はかろうじて持っている。
【2人の共通点は?】
――お二人の共通点は「愛妻家」という点じゃないかと思います。
談志 愛妻という言葉は好きじゃないけども。ちなみに愛するというのは、自己愛ですからね。これに死なれるとテメエが困るから、大事にしているだけで。これを愛妻というのか何だか、分からないけど。
太田 えっ、愛妻家って言われてますか? 恐妻家とは良く言われるんですが。ただ、うちのカミさんが「あーたは私のことを恐妻、恐妻っていうけど、私は恐妻じゃない。あーたが恐妻家なだけなのよ」と言ってます。でもそれって、どこが違うんですか?
談志 ふっ。分かるなあ。
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最後の「愛妻家」という質問についてですが、お二人は共に20代半ばで若くして結婚され、その後は奥様一筋。お二人ともあれだけ破天荒な言動で売っているのに、こと女性スキャンダルの話はこれまで一切、表に出ていません。それぞれの著書の中でも、奥様のことをたたえる記述が特に目立っていたので、女性には優しく、フェミニストの一面も聞いてみたい、と思って質問してみたのでした。
今回は本当にやりがいのある取材でした。このブログ読者のみなさんも、今後、気になる落語家さんで「ALL ABOUT」で取り上げて欲しい方がいましたら、ぜひぜひお便りをお寄せ下さい。また、編集長から私に仕事が降ってくるかもしれませんので。
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